うたぷり
□泣き顔よりも笑顔を見せて
1ページ/5ページ
今日も無事にお仕事終了です。予定よりだいぶ遅くなってしまったので、急いで帰りましょう!そう思い足早に歩く私の携帯が着信を知らせる。
「…翔くん?」
こんな時間に珍しいなぁと不思議に思いながら電話にでた。
『七海!今、どこにいる?!』
すごく慌てた様子で翔くんが早口に話す。
「えっと、Aスタ出た辺りなんですが、どうかしたんですか?」
『藍が…』
「!!美風先輩がどうかしたんですか?!」
イヤな予感がして思ったよりも大きな声が出てしまった。
『あぁ〜なんていうか、練習中の事故…というか運が悪かったというか』
「せ、先輩は…」
まさか、まさか、まさか!怖い予感でいっぱいになる。
『特に酷いケガしたとかじゃないんだけど…とにかく急いで博士の研究所まで来てくれないか?』
「すぐ行きます!」
私は急いで電話を切ってタクシーに飛び乗った。どうか、先輩が無事であるように祈りながら不安な気持ちのまま研究所に向かった。
研究所の前で翔くんが待っていてくれたので、急いで駆け寄って状況を聞く。
事が起こったのはバラエティ番組の企画で、四ノ宮さんが投げたアルミ桶を翔くんが傘で受け取るという練習をスタジオの隅でしていた時だそうです。
「翔ちゃ〜ん!いっきますよ〜!!ふん!!!!」
「どわ!!危ね!!」
勢いよく四ノ宮さんが投げたアルミ桶が、翔くんの横をすり抜けてちょうどスタジオに入ってきた美風先輩の後頭部に直撃したそうです。
「とりあえず藍の意識はあるし、大丈夫だと思うんだけど…」
翔くんが言い淀む。美風先輩は普通の人間ではないので、意識があるからといってどこも故障していない保障はない。今は博士が美風先輩のメンテナンスをしてくれているそうで、部屋で待つように言われていると説明してくれた。
ちょうど部屋の前に来たところで中から美風先輩と四ノ宮さんの声が聞こえた。
「ほんと、気をつけてよね」
「ごめんなさい、藍ちゃん…」
聞こえる声はとても元気そうです!
「藍、もう大丈夫なのか?」
翔くんが扉を開けて先に入る。私も先輩に駆け寄った。
「大丈夫もなにも、始めから平気だけど」
チラッと私に視線を向けて、不思議そうな顔をした。
「ショウ?仕事とプライベートはわけなよね」
「はぁ?!」
「彼女、君の知り合いじゃないの?そもそもここに部外者を連れてこないでくれる」
「ちょ!!ちょっと待て!お前、七海の事わかんねぇのか?!」
「七海…?知らないけど?」
「お、おい…冗談やめろよ!七海はお前のパートナーだろ!」
「ボクにパートナーはいないよ。必要じゃないし」
手も足も震えて、頭がうまく回らない。美風先輩が私の事を知らない人みたいに見ている。翔くんと美風先輩のやり取りが遠くに聞こえているような気がした。
「春ちゃん!しっかりしてください!」
四ノ宮さんに支えられて、何とかぐっと足を踏ん張って意識を保つことができた。
「春ちゃん、翔ちゃんも聞いて下さい。さっき博士さんが藍ちゃんの記憶に何か衝撃があったのかもって…」
四ノ宮さんは詳しくは良く分からないから今調べてもらってると教えてくれた。今、先輩に何が起こっているのでしょうか。
・