うたぷり
□非効率な行動
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「じゃあ、せっかく朝早くに来てくれたんだから、一緒にご飯食べよう」
ボクは普段、自分が座る椅子に座り、春歌を手招きした。
「…先輩?」
「何してるの?時間ないんでしょ。早くおいで」
手招きでは伝わらなかったのか、今度は両手を広げて呼んだ。
そして、おずおず近づく春歌の手を掴んで、膝の上に座らせて後ろから抱き締めた。
「あぁあああの!」
春歌の心拍数があがる。
「一緒に食べるんでしょ」
抱き締めた片手を離して、箸を持ち春歌が準備してくれた朝食をつまむ。
「はい。あーん」
みるみる赤くなる春歌。
「一緒の意味がちがいます!」
「うん。知ってる。ボクがこうしたいだけ。ほら、口あけて。時間なくなるよ」
なんて我が儘。それでも、ゆっくり口を開ける春歌の口に卵焼きを食べさせる。
「おいひい…です」
「そう。じゃあ、ボクにも食べさせて」
春歌に向かって軽く口を開けてみせた。
「え…えと…あーん」
震える箸でボクの口にも卵焼きを入れる。
「ん。美味しい。ありがと」
以前はこんな非効率な行動なんか理解不能だったけど、春歌と過ごす非効率な行動は楽しくて仕方ない。
これが愛しいって事なのかもしれない。分かれば結構簡単な事だったんだと気づいて嬉しくなった。
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