ゆめ

□ここにいる。
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「それでは、失礼します。」




あの後、結局土方さんと二人で資料を片付けた。


最初はわたしが自室で全部やりたいとお願いしたのだけれど


「二人でやった方が早えだろ。」

と言って、副長室で作業することになった。




もちろん仕事中だからお話しすることはあまりなかったけど、すごく緊張した。

心臓がいつもよりどきどきしてた。



運動不足かな・・・肺活量は結構自信あるのに・・・。





二人机を並べてお仕事するのは初めてで。
土方さんはすごく親切だった。


資料の束を半分に分けるとき、さりげなく土方さんは自分の分を多めに取ったり。


作業が終わったあと「ありがとな。」と言ってくださったり。




鬼の副長なんて全然思えないほど。




ああいう優しさに隊士の皆さんは惹かれたんだなと納得しながら歩き出す。



「なーにニヤニヤしてんでィ。」

「わっ・・沖田さん!」




廊下の角からひょっこり現れたのは、真選組一番隊隊長 沖田総悟さん。


わたしと同じくらいの歳で真選組最強と言われる剣技の持ち主。



わたしも沖田さんは尊敬しているけれど・・・
真選組に来てから何かとからかってくる。



「もう、沖田さん。びっくりしましたよ。」


「そりゃすずがビビりなだけでさァ。」

 
いつもの愛用アイマスクを頭に装着した沖田さんを前にしてはっと気づく。



「あれ、沖田さんこの時間は市中見回りじゃなかったんですか?」


「すず、お前今マヨラーニコチン大魔王の部屋から出てきただろ。」


「ちょ・・・沖田さん聞いてます?」


わたしが慌ててるのも無視して沖田さんが続ける。


「あーあーいいのかねィ。こんな若い娘の警察官が職に就いて早々上司と不純な肉体関係とはねェー。」


「ええええ!?ちょ 沖田さん何言ってるんですかっ!!」


沖田さんはそんなセリフを屯所中に聞こえるように大きな声で言った。
棒読みで。

しかも後半部分の恥ずかしいところは、どこから出したのか大きなメガホンを通して・・・。


それにわたしが耐えられるはずもなく、顔が真っ赤になった。


「もう沖田さんっ!やめてくださいー!!」


他の隊士さんに聞こえでもしたら!!

・・・絶対に誤解を招いてしまう!!


メガホンを奪おうと思っても身長の差で全く届かない。



すると廊下の向こうから原田さんが歩いてきた。



原田さんはわたしが真選組に来てからとても優しくしてくれるいい人・・・!

そんな原田さんに軽蔑されたら悲しすぎます!!


「は・・原田さん!これは違うんです!!沖田さんが勝手に!!」

必死に訴えてみると、反応は意外なもので。



「なーんだよ、わかってるってすず!!沖田ァ!あんまりすずをいじめすぎんなよ!」

と手をひらひらと振って笑いながら通り過ぎて行った。





周りにいる隊士さんたちも


「まーた沖田隊長やってるよ」
「すずも大変だなァ」


笑っているようで、なんだか安心した。

沖田さんはつまらなさそうだったけれど、
そうですよね、皆さん沖田さんの悪ふざけってちゃんとわかってらっしゃるんです。


と思っていると後ろの方から物凄い勢いで走ってくる・・・・




局長と副長。




わたしと沖田さんの前でキレよく足にブレーキをかけると、すごい形相で喰いついてきた。



「すずちゃぁぁぁぁぁあん!!!駄目だよ!?乙女はちゃんと大事にしなきゃァ!!
勲はすずちゃんをそんな子に育てた覚えはありませんよォォォォ!!!」

顔全体をぐしゃぐしゃにして泣きながら叫んでくる、近藤勲局長。



「・・・桜村たぶらかしたっつー奴は余程俺に斬られたいらしいなァ・・・?どいつだ・・・地獄への片道切符を獲得したのはよォ?」

先ほどわたしが見たやさしい土方さんはどこに行ったのでしょうか。


まさに鬼の形相で辺りを睨みまくっている、
土方十四朗副長。


「いやてめーが元凶だっつの。」

真顔で土方さんにバズーカを向ける沖田さん。

「あっぶね!!総悟!!てめーは毎度毎度それしかねーのか!!」



「トシぃぃぃぃい!!!俺は悲しいぞ!!デリケートな年頃の娘にあんなことやこんなことできたらいいな〜〜!!」


「おい近藤さんそれあんたの個人的願望だろーが!てかドラ○もん!!?」





「世の中の大人なんて皆きれーなゴリラの皮かぶったゴリラでさァ。すずも気を付けろよ。」

「それそのまんま近藤さんじゃねーか!!」

「え トシそれどういう意味?」






いつのまにか三人の言い合いについていけなくなってしまった・・・。

「えと・・・沖田さん、見回りは大丈夫なんですか?」



三人がぴたりと止まり、わたしを見る。


「・・・・・・は、走ったから早く終わっいだっ!!」

沖田さんが言い終わる前に土方さんの鉄拳が沖田さんの脳天に直撃。


「なんだ今の間は!!早く行って来いっ!!」


さすがの沖田さんも土方さんを睨みつつ、見回りに向かった。


「・・えと、土方さん、近藤さん、さっきの話は沖田さんがからかったもので・・・」


「わーってるよ。心配すんな。」

「大丈夫だ、すずちゃん。俺もトシも最初からわかっていたさ。」


あの、お二人が一番反応がおかしかったんですけれど・・・





「何かあったらちゃんと言えよ。」
「何かあったらちゃんと言うんだぞ。」




二人がそろって言ってくれた。

また泣きそうになった。



真選組の皆さんは、いつもわたしを守ってくれて、心配してくれて。

とってもやさしくて、あたたかくて。



父上みたいだなんて、いつから思ってただろう。



真選組が大好き。
わたしをここに配属してくれた松平さまも。

わたしも皆さんを守れるように、強くならなくては。








今日もいつも通りの日常に、

感謝。
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