ゆめ
□斬る。
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夜の静けさと少し冷たい夜風が辺りを融かす。
その中に金属同士が打ち鳴らす音と刀が交わる音、醜い悲鳴が轟いていた。
わたしが見えているのは、たくさんの浪士たちと鬼の副長が斬り合っている光景。
わたしの目の前には、わたしをかばいながら敵を次々と斬り殺していく土方さんの姿。
土方さんのその姿はまさにお伽話に出てくる鬼のようだった。
何人の浪士が刀を振り上げどんなに威勢よく斬りかかってきても土方さんの一太刀で一瞬にして息絶える。
今や其処らじゅうに血まみれに横たえる死体が転がっていた。
それでも敵は数が減る気配もなく、ぞろぞろと後から湧き出てくるようだった。
返り血で赤く染まる土方さんの背中で、わたしはただ刀で相手からの攻撃を防いでいた。
土方さんの言葉が頭によぎる。
お前を傷つけたくない。
お前が死んだら、たくさんの人が悲しむ。
守るのは当たり前だろうが。
「くっ・・・!!」
悔しさと悲しさで剣に集中できない。
はやく近藤さんたちに応援を頼まないと危ないかもしれない。
「ククッ、女隊士といえどもやはり貧弱な小娘だったか。半端な覚悟で戦場に出たことを後悔しながら死ぬがいいわァァァァアア!!」
「・・・!!」
隙を突かれてわたしの頭上に刀が振り下ろされる刹那
「てめーが欲しいのは俺の首だろうが。余所見してんじゃねェ。」
冷たく言い放ったと同時に土方さんの刀が浪士の首を斬り落としていた。
「土方さん・・・っ!!」
「怪我はねェな、桜村。」
すると土方さんの携帯が鳴り響いて、土方さんは電話に出た。
『トシ、無事か!!?今ちょうど町民から浪士と斬り合っているという情報を得たんだがお前たちの近くじゃないか!?』
「あァ近藤さん。今まさに斬り合い真っ最中だ。さすがに危ないから桜村を迎えに何人か応援を頼む。」
『すずちゃんは無事なんだな!!いいかトシ!!やむを得ずの時はすずちゃんに戦わせてやるんだ!!もう少しで俺たちがそこに着く!!それまで耐えてくれ!!!』
「わーったよ。」
「いやァっ!!」
わたしの悲鳴に気づいた土方さんがすぐさま駆けつける。
「桜村っ!!」
土方さんはわたしに降りかかってくる敵の斬撃を受け止め、敵を斬り捨てる。
「・・・ちっ。」
「土方さん・・!腕から血が・・っ!」
剣で受け止めるのが一瞬遅かったせいかすべての斬りを防ぎきれ腕を少し斬られてしまった。
「どうってことねェ。オロナイン塗っときゃ治る。」
平気な顔で刀を構えなおす。
「・・・しぶとい幕府の駄犬めが!!」
「うるせェな。こっちも好きで尻尾振ってるわけじゃねェよ。・・・一つ聞くが、てめーらがさっき言ってた松坂うんたらって誰のことだ。」
「松坂牛鬼さまか?・・・ククッ、いずれわかるだろう。冥土の上から見物するがいい!!・・・ってギャアアアアアアアァアアアアア!!!!!」
「答えになってねーよ。」
問答無用に切り捨てる。
「トシィィィィィィイ!!!すずちゃあああああああん!!!無事かぁぁぁああ!!真選組だ!!!浪士ども、お縄につけぇぇい!!!」
「こっ、近藤さん!!沖田さん!!みなさんも!!」
「お縄につけーい。」
沖田さんが真顔で土方さんめがけてバズーカを発射し、土方さんは間一髪で回避した。
「てんめぇ総悟ォォォォォォォォオオ!!!標的明らかに間違ってるだろうが!!」
「いや、近藤さんが土方さんたちを迎えに行こうって言ったから。」
「あの世のお迎えが来るわ!!てか桜村も巻き添えになっちまうだろうが!!!!」
「すずちゃん、大丈夫か?」
「近藤さん・・!!」