餡菌小説

□発現
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いつも通りバイキンマンが現れて、いつも通り悪い事をしたのでアンパンチで追い払う。

いつもだったらバイキンマンを追い払ってから後を追ったりしない。しかしこの日はアンパンマンはバイキンマンの後を追った。


『バイキンマンってさ、お前の事が好きなんじゃねえの?』
頬杖を付いてカレーパンマンは言った。

バイキンマンはなぜ自分を目の敵にしているのか、そういう話題になった時だった。

『…何で』

問いかければカレーパンマンは口唇を突き出して答える。

『だって毎回毎回追い払われてんのにさ、それでもしつこく来るんだろ?これはもうアンパンマンの事が好きだからとしか考えられねーんだけど』

『それはあなたの事でしょう、カレーパンマン。逃げられてるのに毎日クリームパンダを追いかけてる事、知ってますよ』

優雅に紅茶を飲み、食パンマンが口元に人の悪い笑みを浮かべる。

べしょ、とカレーパンマンは行儀悪くテーブルに突っ伏した。
『だってよー相手が俺の事避けてても、やっぱ好きだったら会いたいじゃねーか』

うぉぉぉクリームパンダ可愛いぃぃぃ!と脳内妄想で悶えるカレーパンマンを一瞥しカレーパンマンはともかく、と食パンマンはアンパンマンに向き直る。

『バイキンマンが確実にアンパンマンを好きかどうかはわかりませんが。他の人とは一線を引いているのは確かだと思いますよ』

アンパンマンは食パンマンの言葉に頷いた。
『それは僕も感じてた』

邪険にされたらその人とは会いたくなくなるのが普通だろう。なのにバイキンマンはアンパンマンの前に現れ続ける。

アンパンマンも、何年も同じパターンを繰り返しているのにまともに話をした事はなく、追い払っても追い払っても自分の前に現れるバイキンマンのことが気になってはいた。

この気持ちが何なのか、自分でも図りかねている。

『確かめてみるのもいいんじゃないですか?バイキンマンの気持ちも、アンパンマンの気持ちも』

穏やかに言う食パンマンに、カレーパンマンも上体を起こしそうそう、と頷いている。

『…ああ』

2人に見つめられ、アンパンマンはぬるくなったコーヒーを飲み干した。
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