裏・俺の戯言

□夏〜その後〜
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……いいや。ゲームだゲーム。ったく、一体インドア派なのかアウトドア派なのか全く判らんぞ。
「どれがいい?」
かやのが好きなのはすごろくとかのじっくりやるもの、落ちモノ系のパズル、ミニゲームの集合みたいなお手軽系だ。これがまたコイツ器用で、特に落ちモノパズルなんか俺じゃ全っ然歯が立たん。大体、俺はそんなんよりスポーツとか格闘とかレースとかその辺が好きなんだ。得意分野じゃない分明らかに不利なんだよ俺は!
誰に言い訳してんだよ俺は!
……トランプの時といい、俺って地味に負けず嫌いなんだよなぁ……。
「これ」
「ほぉ?」
かやのが選んだのは、ちょっと古いが名作と言われ、俺がクソほどやり込んだ格ゲーだ。これならハンディキャップ設定を最大にしても勝つ自信がある。
って、どんだけ勝ちたいんだよ俺。
「いいのか?俺手加減しないぞ」
「いい。ソノミと特訓した」
む。そりゃマズいな。園美ちゃんは格ゲーなら下手すりゃ発売日に隠しキャラ全部出すくらいのゲーマーだからなぁ。プレイ時間の長さが出現条件に含まれてた時、わざとつけっぱなしで寝たりもしたらしいし。
まぁその辺のやり込みは技術関係ないが、とりあえず園美ちゃんは強い。ヤバい。一度、俺がこれ以上はないと言うほどやり込み、ツレの間でも完全無敵、全戦無敗の域に達した格ゲーで戦ってみたが、完敗だった。もはや攻撃する隙が全くない。更に園美ちゃんはガードなしという縛りでプレイしていたにも関わらずノーダメージ。つまりわずかに放ったこっちの攻撃は全部避けた。他にも投げ系攻撃のみ使用可だとか、必殺技使用禁止とか、いろんな縛りをつけても結果は全く同じ。もちろんハンデは俺側が最強、園美ちゃん側が最弱設定だ。
アレはヘコんだ。てか正直、引いた。何が怖いって、プレイ中の園美ちゃんの目だ。アレは、見た目アイドル以上に可愛い女の子がしていい目じゃない。あの目をしてもいいのは、何だ。あのー……まぁ、要はヤバい目だったってことだ。
で、集中力も半端じゃない。本気になったらもうゲーム以外目に入っていない。いつか絵美里が、好きなことに対して発揮する能力を他に活かせば、園美ちゃんは向かうところ敵なしみたいなこと言ってたが、まったくもってその通りだと思うよマジでさ。
まぁ、そんなウルトラゲーマーな園美ちゃんに直々に特訓してもらったんだ。要領よくて飲み込みの早いかやのは鬼のように強くなってるに違いない。
「……カズヤ」
「ん?ああ」
俺がキャラ選択で止まってた。様子見で俺が一番扱いに慣れてないキャラで行ってみるか……てか、何だよ。かやのの奴、ちゃっかり俺が一番苦手なキャラ選んでやがる。園美ちゃんめ、違うゲームで対戦してたのに俺のプレイスタイルからこのゲームで苦手なキャラまで推測したというのか!ある意味あの子は天才だ!頭おかしい!
そもそも百近いキャラがいるこのゲームでピンポイントに嫌いなキャラ当ててくるってどんだけだよ!
だが!
「かやのにそのキャラが使いこなせるのか〜?」
かやののキャラはこのゲーム屈指の多彩な手数を持つキャラだ。コマンドで発動する技は他のキャラが多くて十いかない程度なのに対しこのキャラは二十を越える。そして超必殺技のコマンド入力はハイパーシビアだ。俺でも今まで一回しか入力に成功したことがない。
他にも色々ウィークポイントはあるが、要はトリッキーで扱いが難しい。園美ちゃんの特訓を受けたとはいえ、にわかプレイヤーのかやのが使いこなせるとは到底思えない。
「大丈夫。ハンデもいらない」
「ほっほーぅ。言うじゃないか」
最初は適当なキャラで様子見しようかと思ったが気が変わった。最初からマイフェイバリットキャラでギタギタにしてやる!
……やっぱガキだな、俺も。



「……悪夢だ……」
勝った。ソノミが言ってた通りにしたら、簡単に勝てた。カズヤ、弱い。
『あの人はねぇ、空中攻撃の判定が強いキャラで空中攻撃乱発してくるから、判定がもっと強い対空技を相手のジャンプに合わせれば勝てるよぉ』
タイクウワザとかハンテイとかよく判らないけど、どのボタンをどう押したらいいかを教えてもらって練習した。
「カズヤ、弱い」
「……もっかいやろう」
「ん」
あ、カズヤ、キャラクターを変えた。かやのは一つしか練習してないから同じの。
……あれ、おかしいな。カズヤ、強い。
「…………」
「なるほどな……」
今度はあっさり負けた。カズヤは何か判ったみたいだけど、かやのは何で負けたのか全然判らない。
「園美ちゃんの特訓は空中対策だけか。はは、それじゃ勝負にならん」
「……むー」
まだだもん。まだ「おくのて」を隠してあるもん。
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