裏・俺の戯言

□夏〜その後〜
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「もっかい」
「何回やっても同じさ」
始まってすぐはダメ。まだ何か知らないけど、げーじっていうのがたまってないから使えない。
…………うー。
たまった!
「んっ」
「何ぃ交炎烈焼斬だとぉ!?」
このキャラクター一番の必殺技。ボタンをたくさん素早く押さなきゃいけないから難しいけど、ソノミと練習してできるようになった。
「嘘だろ……俺が何度も挑戦して一回しか成功しなかった大技をこんなにあっさり……」
「カズヤ、ふふ、弱い」
「ちっくしょう笑いやがったなこいつめ!」
「わー!」
あははははは、カズヤ、くすぐったい!
「うりゃりゃりゃりゃ〜!」
「あははははは!」
「……何してはるんですか」
「あぁん!?見て判らんかくすぐり地獄だ!」
「あははは、あ、サスケ、助けあははははは!」
「……ほら、かやのちゃん嫌がってるでしょ。やめたって下さい」
あー、やっとカズヤが離してくれた。ひどい。やりすぎ。サスケ、えらい。
「で、君塚。無断で人の部屋入ってきて何の用だ?」
「無断ちゃいますよ、ノックして呼んでも返事せぇへんかったん一弥さんでしょ」
「ん?そうだったか?」
「中から声は聞こえてたんで勝手に開けさしてもらいました」
「呼び鈴、押したらいい」
かやのもそうした。
「俺あの音嫌いやから人様ん家でも押さんようにしてんねん」
「……ふぅん」
何かよく判らないこだわりがあるみたい。まず、呼び鈴の音が嫌いな理由がよく判らない。何度も鳴るとうるさいけど、別にちょっとなら何も気にならない音だと思う。
「で、何の用なんだ?」
「ああ、それがね。ちょっと一弥さん家に案内してくれっちゅうオッサンとネエチャンがいまして」
…………。カズヤと目が合った。
もしかして。
「……おう。それで?」
「連れてきました。今下で待ったはりますから、ゲームやめてさっさと行った方がええんちゃいます?」
「何で連れてきたんだよバカチーン!」
「……ほな追い返してきますわ」
「いい」
サスケが言うとホントに追い返しそう。何をするか判らないからかやのが止める。
「何でかやのちゃんが止めるん?一弥さんの知り合いちゃうの?」
「……いいから。サスケ、ありがと。別にもう帰っていい」
「何やえらい見下されてるな……まぁ、ほなそういうことで」
サスケが部屋を出て行く。かやの達は何も喋れなくて、ゲームの音だけが部屋に響いてる。
「……行くか」
「……ん」



何かさ、最近おかしいんじゃないか?俺に良くしすぎだろ……てか、家まで調べんなよあの人らは。
部屋を出て階段を下りると、目の前の道路には見慣れた黒塗りの外車が。君塚はもういない。逃げたか、めんどくさくなったか、用事があったのか。まぁめんどくさかったんだろう。
「やぁ、一弥君」
「ども」
誠治郎さんだ。かやのの養父。で、多分助手席には香澄さんが乗ってるんだろうな。
「すまないね、家を調べるなんて不躾なことをした」
「いやまぁいいっすけどね……いずれは教えることになると思ってましたし」
不躾だと思うならやるなよ。
「それで」
「うお!?」
「え!?あ、すみません驚かせちゃいましたか?」
気付いたら横に香澄さんが立っていた!いや、助手席にいるもんだとばかり思ってたから驚いたよ。
「いえ、大丈夫です……」
「そうですか。良かったです」
もー、この眩しいくらいのニコニコ顔。何なのこの人は。かやのとは別の意味で可愛いな。人妻だけど。
「お母さん」
「ああかやの、車に乗りなさい」
「…………」
別に家に帰ること自体は吝かじゃないだろう。でも確かに、何の説明もなしってのは納得いかない。
「何すか?用事でもあるんすか?」
「さ、一弥さんも早く乗って下さい」
「???」
で、何か知らんがかやのは俺が車に乗るよう勧められた瞬間に顔を輝かせて後部座席に華麗に着地、隣をぽんぽんと叩いている。
俺と居られりゃどこでもいいんだなこいつは……。
「カズヤ、早く」
「……オッケー、判った。判ったからちょっと時間くれ」
どうせ木見原一家からは逃げられない。別についてったところで取って食われるわけでもないからいいんだが……。
とりあえず、部屋の鍵を閉めさせてくれ。



と、いうわけで。ただいま木見原邸への道中ですよ。まったく、いったい何なんだ。
ん?てかこれホントにかやのん家行ってんのか?よく考えりゃ行き先聞いてないぞ。大丈夫だとは思うけどさ、この人らだし。
「一弥さん」
香澄さんがニコニコしながら助手席から振り返る。
「はあ。何すか?」
こっちは困惑気味だよ、何も知らずにいきなり車乗せられてさ。説明してくれんのか?
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