LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜数学強化週間〜
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「安心して、オレは無理な問題は出さないから。香織はこの問題集、こなたはこれ、七星はそれやってプレッシャークエスチョンに備えなさい」
「え、何で私の名前…」
「さっき香織と話してるの聞いた。質問は随時受け付けるから」
「てか、この問題集香織の宿題…」
「細かいことは気にしない!勉強開始!」
「「「亞花里先生」」」
三人が同時に手を挙げる。
「…はぁ…判ったわ。順番にね」



「ここはこのxがこうなってこうなってこうなって…」
「いやいや待って。その変形どうなってんの」
「これとこれが2でくくれるのよ」
「おお」
「亞花里さーん」
「ほいほーい今いくよ」
勉強開始から二時間。
質問の回数の多さはともかく、意外にも三人は真面目に勉強し、亞花里はきちんと教えている。
「理解できてるみたいですね…教え方上手いんでしょうか」
立ち直った笑華が修と少し焦げたクッキーを食べながら話している。
「まさか。超雑じゃねェか」
ここで亞花里が高らかに声を上げる。
「はーい!一回目のプレッシャークエスチョンよー!」
「「イェー!!」」
「待った。意味判ってノってんの?」
「じゃ香織!!」
「え、私!?」
「あんたにはこの問題!『3以上の自然数nに関して、Xのn乗+Yのn乗=Zのn乗を満たすような自然数X、Y、Zは存在しない。これを証明せよ』!!」
ぱこーん。
笑華がスリッパで亞花里を叩いた。
「解けるわけないでしょう!!高校一年生にフェルマーの最終定理の証明なんてさせる方が間違ってます!!」
「冗談じゃないの…。てか、オレはできるよ?」
「黙りなさい!貴女は少しおかしいから例外です!それに高一ではないでしょう!」
「判ったよ亞花里!」
この言葉に笑華が驚く。
「は!?ホントですか!?」
「なるもんはなる!!」
ぺこーん。
今度は香織をスリッパで叩いた。
「証明になってません!!判らないと答えた方がまだマシです!!」
「いったいなあ!冗談じゃん!」
そんな二人は放っておいて、亞花里は問題を選ぶ。
「香織はー、ほれ、このページの問2の3番。ちゃんと理解できたなら解けるはずよ。こなたはここの1番。七星はこの練習問題4の6番ね。ノーヒント、時間は無制限でいいわ。解けたら見せて」



「できた」
「上手くいったかな…」
「解けたでー」
三人が同時に亞花里を呼んだ。亞花里は修に猛烈アプローチ中だ。
「修〜このクッキー超美味しいー♪すごいね修って運動もできるし七ヶ国語に精通だし料理…」
「あいつら呼んでるぞ。できたってよ」
「あ?」
一気に不機嫌そうになる亞花里。
最初は教えたがっていたのに理不尽である。ここで間違えたら本当に山嵐をかけてきそうな不機嫌ぶりだ。
「香織、ノート」
「はい」
香織は自分の答えを書いたノートを亞花里に手渡した。
「……」
「あ…亞花里…?」
「一番最後に、出た答えが与式で成り立つかどうかの説明がされてないけど、セーフにしとくわ。よくできたわね」
亞花里は優しく笑って香織にノートを返した。
「やったっ!」
「次、こなた」
「はい…」
「ふむ……こっちも最後に、等号成立条件が示されてないわね。でも、まぁいいでしょう。よくできたわ」
「よしゃー!」
亞花里は香織にしたのと同じように優しく笑い、こなたにノートを返しながら言った。
「ただし、それテストじゃ減点よ。これからは注意しなさい」
「「はーい」」
「最後、七星」
「はいー」
「……?…!これは…!」
「へ?」
「七星…あんた…」
「うゎーまさか七星山嵐の餌食かー!?」
「脊髄損傷は確実と言われるあの山嵐のー!?」





「問題…違うのやってるわ…」





一同、唖然。七星だけニコニコしている。
「6番じゃなくて5番ねこれ。まぁいいわ…これで見てみましょう」
問題とノートを難しい顔で見比べている亞花里は、本当に真面目な先生といった感じだ。笑華と修は亞花里を少しだけ見直した。
「合ってる!七星だけ完璧よ!」
「やったー!」
「成績学年最下位の七星が完璧な解答を!?」
「にわかには信じられないねかおりん!」
「はいはい、喜ぶのはそこまで。次の問題までまた勉強よ」
そこに、笑華が口を挟んだ。
「待って下さい、ずっと勉強じゃ疲れるでしょう。休憩しませんか?修さんの作ったクッキー、まだまだたくさんありますから」
「んー、そうね、少し休もうか」
「「「やったー!」」」
修は煙草を口にくわえてから、思い出したように箱に煙草を戻して、はしゃぐ三人を見て思わず顔を綻ばせた。
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