LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜数学強化週間〜
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「「「できたーっ」」」
三人が六問目のプレッシャークエスチョンを解き終わり、亞花里を呼んだ。
「よし。皆できてるわ」
勉強開始から休憩を含めてすでに七時間が経過している。質問の回数は徐々に減り、ミスも少なくなり、解くスピードはどんどん上がる。
よくもまあここまで集中力が続くもんだと、何故かずっと居座っている修は思う。クッキーはとっくになくなってしまっていた。
そろそろ亞花里も疲れてきた、というか飽きてきたのか、ため息が多くなってきた。
「あら…問題集が終わっちゃった」
「お?うわぁありがとこなた、七星!助かったわ!」
「うわーっ不覚!亞花里さんに乗せられてつい…!」
「亞花里ちゃん教え方上手いもんな〜」
あれが上手い教え方なのか、と修は疑ったが、生徒が喜んでいるのに水を差すこともないと黙っていた。
「よーしじゃあ今日はこれまで!皆頑張ったわね!」
パンパンと手を叩き、亞花里がしめた。
そこに、買い物に行っていた笑華が帰ってきた。
「お帰りぃ笑華。この子らお腹空いたってー。オレも減ったわ」
「勉強はおしまいですか。では、腕によりをかけておもてなししましょう」
「笑華ちゃんの手料理やー」
「よしゃっ!笑華さん、あのさ…」
「こなたさん、何を頼もうとしてるのか知りませんが、先に断っておきます」
「残念…笑華さんの裸エプロン…」
こなたは心底残念そうに肩を落とす。
「修さんも是非」
「あ?いいのか?」
「ええ、折角ですから。亞花里が始めたバイトのおかげで少し余裕も出てきましたし」
「そうか…じゃあお言葉に甘えるか」
「ゃん修もここで食事!?じゃオレも何か作るわ!」



その頃、沖津家。
「急に呼び出して悪かった」
「いい」
居間には、圭と空の他に、もう一人の人影があった。
戸叶健。
無愛想で無口な少年の彼は、「道」のメンバーにして、圭や空も所属する秘匿組織「結」のメンバーでもある。
「今日呼んだのは」
「情報交換…」
「そうさ。それと今後の方針の相談だ」
「僕たちが妙な動きをしていることが組織にバレている」
「もう…?すごい情報網ですね…」
「それはこっちも同じだ。七星がいればどんな情報も筒抜けだからな。だから今日情報交換はあまり重要じゃない」
「これからの動き?」
「ああ、『道』と『輪』…。接触するとしたらどっちが先がいいと思う?」
「『輪』」
「故は?」
「『輪』は自分たちにとって不利益な組織以外には基本的に友好的だ」
「『道』は違うと?」
「『道』の目的は『輪』の壊滅とその地位の奪取。他の組織と手を組んでも最後には潰すつもり」
「…つまり?」
「『輪』の方が協力を仰ぎやすい。いつどうでるか判らないから『道』に接触するのは後にした方がいい」
「なるほどな。敵意を持ってるのは『道』だけで、『輪』は仕方なく応戦してるわけか。『輪』は相手を潰すことを目的にしてないから、和解を目指す『結』と目的は一致する。手を下さないですむならそれが一番だろうしな。被害も考えると」
健の語る少ない言葉からここまで読みとる圭も大したものである。
「『輪』に接触するに当たって、何かいい案はありますか?」
「任せる」
そして圭はニヤリと笑い、
「俺と空で考えた案があるんだ。聞いてくれ」
と言った。



「いやー美味しかったね!」
「ごちそうさん〜」
「お粗末様です」
夕食を終えた中本家にいた六人。
亞花里と笑華が食器を台所に運び洗い始める。
そこで亞花里が、笑華に小声で話しかけた。
「笑華」
「ええ。沖津家に健君が来ています。修さんの足止めを」
「判った」
食器洗いを終えた二人は、四人で雑談をしている中に混ざった。
「さって、ありがとなお前ら。美味い飯食わしてもらったよ。そろそろ帰るわ」
「修〜もう帰っちゃうの?お風呂とかー、いっそ泊まっていきなよー。何なら、オレと風呂入る?一緒に寝る?」
「バカか」
「何よぉちっちゃい頃よく一緒にお風呂入ってたじゃん一緒に寝たじゃん!」
「何年前の話だそれは!」
「ぉぉ…萌え…」
「こなた。口出さないでねややこしくなるから」
笑華も亞花里も平静を装っているが、内心はかなりハラハラしている。修に健を見られては厄介だ。



何とか健が去るまで足止めに成功した二人。こなたと七星も家に帰し、胸をなで下ろした。
「よかった…」
「上手くいきましたね…」
「ん?何が?」
香織がいるのを忘れていた二人は心の底から驚いた。
「ああ、香織の宿題がよ」
亞花里のとっさの演技はやはり大したものである。



次の日。
「お前ら、昨日修を必死で足止めしてたろ」
圭が笑華と亞花里に言った。
「別に瞬間移動で健を隠すくらい簡単だったんだけどなァ」
「「…あ」」




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