LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜晩餐〜
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「はぁ…」
「いつまでブルーになってんだ。たまにはいいだろこういうのもさ」
沖津圭はかなりテンションが低い。晩ご飯に何が食べたいかという議論を兄の修と繰り広げていると横から妹の空が
「外食ってしたことないなあ…」
なんて悲しい独り言をポツリと呟いたのでとってもとっても苦しい家計であるにも関わらず奮発してファミレスに来ることになった。空は超ご機嫌だ。
「そうだな…まぁ空も喜んでるみてェだし、今日くらいな」
「そうだよ俺らだって外食なんて片手で数えられるくらいしか行ったことねェしいい機会だろ」
そうこう話しているうちに地元のファミレスに着いた。
沖津家の三人は店員に促されるまま四人用のテーブルについた。
それから程なく水が届き、滞り無く注文を済ませる。料理が来るまで修は煙草を吸い、圭と空は二人で話をしていた。しかし圭のテンションはまだ低いままだ。
そして圭は横のテーブルの下にいる謎の生物に気付く。
「…でよ…これってどうなんだろうな…」
「何がですか?」
「アレ、見てみろ」
圭は顎をしゃくって隣のテーブルを示す。
「あら」
「お」
「無い。無いな。どう考えたって飲食店じゃあり得ない」
ゴキブリが、いた。

何でいるのかと、それは放っておくことにして、微妙に暗い雰囲気でいる三人の下に美味しそうな料理が届いていく。ゴキブリの横で。
「で、ひっくり返ってんだよな。動けねェんだ」
「そうそう。必死になって元に戻ろうと足掻いてバタバタしてると…」
「回るんですよね…」
ゴキブリはくるくる回っている。ホントに頑張っている。健気なのだが、何せゴキブリだ。正直、気持ち悪い。三人は滅多にない外食の機会なのに、料理に手をつける気が起きないでいる。
「ま、まぁ、アレはほっとけ。冷めないうちに食わねェともったいねェぞ」
「あぁ、そうだな。とにかく食おう」
「まだ回ってますね…」
「…」
「…」
「そうだな…まだ回ってるな…」
「起き上がれるといいな…」
「早く消えてくれませんかね…」
「店員に言うか?」
「お店の評判落ちそうですよ」
「悪いよなそれは流石に…」
「もういい!食おう!」
「そうだな!空!食え!ステーキもあるぞ!」
「ハンバーグにかかってるソースの黒光りって…」
「やめろ空!その先は言っちゃならねェ!」
「食えるモンも食えなくなるだろうが!」
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