LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜三年越しの誓い〜
1ページ/3ページ

日本のとある喫茶店。休みが重なった『輪』の笑華、パエリア、ワインは三人でのんびりお茶を飲んでいた。
「ナカモトさんっ私新しいリボン買ったんです!どうですか?」
幼いワインを笑華とパエリアは妹のように可愛がっている。
「ええ、とても可愛いですよ」
そして、そんな他愛もない会話を聞きながらカフェラテをすすっていたパエリアはあることに気付く。
「あれ?今日って何日だっけ?」
「え?えーっと○月の…×日ですね」
「そっかぁ…もうあれから三年なんだ…」
「あれって?」
「ああいやいやこっちの話。大したことじゃないから」
「はあ」
三年前。パエリアには想い人がいたのだが、ある事情で会えなくなってしまったのだ。
(彩斗さん…)
とパエリアが物思いに耽っていると、
「彩斗さん、ですか?」
「え?」
「その人、誰ですか?」
「え、やだアタシ声に出てた?」
「出てました」
「嘘ーっハズいー!」
「ふふっ、で、誰なんです?もしかして恋人さんですか?」
「…うん…まぁね…そんなとこかな」
急に表情が暗くなるパエリア。それを見て不安がるワイン。
「パエリアさん?どうかしましたか?」
「ううん、何でもないわ。大丈夫」
「そう、ですか」
そんな二人の会話を聞きつつ笑華は考える。
(はて…彩斗?どこかで聞いたような名前ですが…)
(龍周焔華嬢の実兄だ)
と答えたのは笑華の中の『闇』、河野貴明である。
彼は幽霊の焔華がこの世におとされ会った時、何か役に立つかもと焔華の記憶を洗いざらいコピーして入手していたのである。焔華が覚えていないことでも、脳内に存在はしているために兄弟や親の記憶も情報として持っている。
彩斗というのは父親が同じで腹違いの焔華の兄である。三年前当時で25歳だったので、焔華より15歳年上だ。
(ああ、そうでした。…まさかとは思いますがパエリアさんの言っているのは…)
(訊いてみればいい)
(…)
「パエリアさん」
「何?」
「その…彩斗さんの名字は判りますか?」
「珍しい名前だったしはっきり覚えてるわよ。何で?」
笑華は嫌な予感がした。
「して、その名前とはズバリ?」
「龍周、だけど」
予感は的中した。龍周なんて名前他ではなかなかお目にかかれないので、例の焔華の兄とみて間違いないだろう。
「あれから三年、ですか。これは勝手な推測ですが、もしかして今日は彼の─────」





龍周彩斗とパエリア=シュリークは二人で夜の街を歩いていた。
日本、東京。久々にまとまった休みがとれたパエリアは彩斗に会いに来ていたのだ。
毎日彩斗の仕事が終わるまで待ち、それから二人でただ話しながら歩く。彩斗の仕事が休みの時は一日中二人でいることもあった。
パエリアは楽しかった。こんな日々がいつまでも続けばと思っていた。
しかしそんな望みはある一人の来客により粉々に打ち砕かれる。

パエリアは既に彩斗に『輪』のことを話していた。彩斗も最初は驚いたものの、すぐに受け入れてくれた。
『輪』のことをふまえた上で、彩斗はパエリアに話があると持ちかけた。彩斗は25歳、パエリアは18歳の時である。
「パエリア…聞いてほしいことがあるんだ」
「何?改まっちゃって」
「…この前行った遊園地…楽しかったな」
「うん」
「その前に行った博物館も…楽しかった」
「うん」
「その前の動物園も…楽しかった」
「うん」
「パエリア、君のこの名前は偽名だと前に言っていたね。組織にもらった名前で、いつでもこう名乗るように言われたと」
「うん」
「俺に…本当の名前を教えてくれないか」
「彩斗さん…?」
そこに、ある人物が現れた。
その男は金髪金目で、いかにも女ウケしそうなハンサムな容姿だった。
「君がパエリア=シュリークか」
「!?」
「…誰?」
「名乗るほどの者じゃないよ。僕は…『道』のメンバーなんだけど」
「…っ!?『ロード』!?」
「パエリア知ってるのか!?」
「『輪』の敵対勢力の一つよ…。アンタ、能力者ね」
「ご名答。下手なことは考えない方がいいよ?」
「パエリアを…どうするつもりだ」
「おにーさんはちょっと黙っててくれるかな?うるさいんだけど」
「ごめん彩斗さん。これは私の問題なの」
「…くっ」
「さて、邪魔者はいなくなった。ミス・シュリーク、答えを聞こうか」
「私は…」
パエリアのもとにはたびたび『道』の下っ端が訪れていて、『輪』から『道』に乗り換えないかと誘われていたのだ。
「…行かないわ」
「ありゃりゃ。何でさ?」
「アンタに言わなきゃならない義理でもあったかしら」
「ないねぇ」
金髪金目の青年はあごに指を当て「んー」と考えた後に、
「じゃ力ずくかなあ。ピルソインはやむを得ないこともあるって言ってたし…」
「私と戦うっての?」
「いや、僕も怪我するのはイヤだからね、とりあえず君が揺れそうなことしてみなきゃ…ああ、いいもん見っけ」
青年は彩斗の方に手を向けて、パチンと指を鳴らした。
「……!!彩斗さん逃げて!!!!」
「!?…!?」
既に手遅れだった。彩斗の右足と左腕は綺麗に切断され、血がドクドクと出ていた。
「まぁそれだけじゃ治療をちゃんとすりゃ死なないから。ミス・シュリーク、『道』に入ったらそのおにーさんに斬った後も残さない完璧な治療を施すよ。どうだい?」
パエリアは迷った。『輪』を裏切る行為はしたくない。だが彩斗をこんな風にしたのは自分の責任だ。治療を受けさせたい。普通の病院なら命を取り留めるだけで精一杯だろう。
そこで、彩斗が口を開いた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ