裏・俺の戯言

□裏LIGHT JOKER〜いきすぎた兄妹愛〜
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非常にマズい状況だ。
「ああ朱雀、ああ朱雀、ボクの愛しい朱雀!今すぐに、ボクと愛の形を確かめ合おうじゃないかっ!」
「来んな」
朱雀は襲ってくる火鳥を押し返した。まだ理性は残っているようである。
(……愛佳早く帰ってきてよ……)
今、朱雀と火鳥は愛佳の下宿先のマンションで二人きり。よくあることだが、今回は少しばかり事情が違う。

朱雀と火鳥、お互いにお互いの「しるし」がついてしまったのだ。





「来たよーっ!」
朱雀が愛佳の下宿で一人で煙草を吸っていると、火鳥が遊びに来た。
「やあボクの愛しい朱雀っ。まっちんはどこだいっ?いや別にまっちんに用があるわけではないのだけれどねっ一応部屋の主だからどこにいるのか気になった次第さっ」
「バイトよ。何しに来たの?」
「君に会うのが理由じゃ……ダメかい?」
「あっそ。じゃ目的は達成したわよね。帰りなさい」
あの話(表LJ四十六気絶目参照)をした後、火鳥は意味もなく遊びに来ることが増えた。朱雀だけでなく、旧友に会う意味も込められているのだろう。
「つれないねっボクは一分一秒でも長く君と過ごしていたいというのにっ」
全くこの超重度なシスコンはどうすれば治るのだろうかと朱雀が思案していると、火鳥は勝手に冷蔵庫を開けて新品のコーヒー牛乳を取り出した。
「さあっ乾杯といこうじゃないかっ」
「何ウチのコーヒー牛乳勝手にとってんのよ!返しなさい!」
吸い終わった煙草は完全に火を消してからゴミ箱へ放り投げて朱雀は火鳥(の持っているコーヒー牛乳)を念力で弾いた。
「おっと」
負けずに火鳥は念力で応戦。そうやっているうちに、生身の体も使った兄妹喧嘩に発展した。
「この!チビが!」
「昔は君の方が小さかったのにねぇっだが君の可愛さは勿論昔も今も限界突破状態さっ」
コーヒー牛乳は床に落ち、単なる取っ組み合いになってしまっている。
「おっ」
「わっ」
お互い同時に念力で足をかけて転ばせようとしてしまい、二人一緒に倒れ込む。
朱雀は前に、火鳥は後ろに。
端から見れば、朱雀が火鳥を押し倒したと思いこんでしまうだろう。
そして、床に二人で倒れた時。
唇が思いっきり触れ合ってしまった。
「!!!」
一気に顔を真っ赤にして後ずさる朱雀。袖で懸命に口を拭いている。
「かっ……火鳥」
「何だい?」
「もしかして……『しるし』、ついた?」
「ついたね」
「…………」
朱雀と火鳥は「火心」フェルマの血統に属する吸血鬼だ。「火心」の血統の能力の一つに、「『しるし』をつけた相手に、自分を愛していると錯覚させる」という精神操作系の力がある。「しるし」をつけるには、「しるし」をつける対象の血を吸うか、対象と粘膜接触すればいい。
ハプニングとはいえキスをした朱雀と火鳥は、お互いに「しるし」をつけ合ってしまったというわけだ。「しるし」を取り除くためには、誰でもいいので「しるし」をつけられた相手(今回の場合火鳥にとっては朱雀、朱雀にとっては火鳥)とは違う者と粘膜接触する必要がある。
「っ、ウチちょっと外でキスしてくる!」
妙な宣言だ。
朱雀は立ち上がってリビングを出ようとしたが、自然と足が止まってしまった。
(……何……行きたくない……。火鳥と一緒にいたい……って、まさかもう「しるし」の効果が!?)





というわけで、今に至る。火鳥はこの部屋を出るつもりはないらしく、必然的に朱雀も部屋を出ていくことができないでいた。
(……どうしよ。ウチ、もうかなりコイツのこと好きだわ……)
「あああっボクらは兄妹という大きな絆の壁を今まさに打ち破らんとしているっ朱雀とボクの愛の巣となりうるは騎士団の元アジトっ!このとても記念すべき話が何故表ではなく裏に置かれているのか塵未満に問いただしてやりたいところだねっ朱雀!」
「ウチは裏でよかったと思うけどね……」
「ああっ、何も気にせずボクとしっぽりできるからだねっまったく照れちゃって可愛いねっ朱雀!」
「ちゃうちゃうちゃう!つーか表とか裏とか塵未満とか軽々しく口にすんなバカタレ」
火鳥の言動はいつにもましてひどい。ストレートなのはいつもだが、今は卑猥な方向に走っている。
今火鳥が襲ってきたら、おそらく朱雀は何も抵抗できずに兄妹の一線を越えてしまうだろう。それだけは何としても避けなければならない。
つーか、そんなエロシーン書いたら作者が興奮し……もとい、作者がフォレストさんに怒られてしまう。
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