裏・俺の戯言

□裏LIGHT JOKER〜If…もしかしたらの物語〜
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今日もまた、喫茶店「エアーズ」の扉にぶら下がっている「営業中」のプレートが「準備中」に変わった。
「よーっしゃ、んじゃ今日もおしまーいっと!」
ぐぐぐっと伸びをしてから店長兼経営者の古賀満人は店内に戻った。中にはバイトに入っていた少女が二人、まだ残っている。
「美奈子ちゃん、莉子ちゃん、ありがとう。もう今日は終わりだよ」
「あ、はい」
閉店間際になると客もまばらになるので今はこれでいいのだが、小さな喫茶店とはいえ昼時は結構混む。普段は四人ほどバイトがいないととても回らないくらいの人気だ。
「さーって、一応シフト表確認しとくかー」
「僕と莉子ちゃんは明日も入ってますよね、昼から」
バイトの一人は絹持美奈子。満人の高校の頃の演劇部の先輩、斬合麗音の「光」だ。別に麗音が強要したわけではないのだが、自分からやってみたいと言ってバイトを始めた。
もう一人は龍周莉子。大学に通いつつ生活費を稼ぐため、バイトを頑張っている。将来の夢である助産師になるため、勉強にも精を出す努力家だ。
「んーそうだな。……って、あー!!」
「どうしたんです?」
「そういや明日の昼のバイト急にキャンセルしやがった奴が約二名ー!」
「え?ということは……」
「そうこのままでは明日の昼はおっぱいが四つしかないことになってしまうのだ!」
「つまり、女の子が私と美奈子さんだけになるってことですね……」
「しかもヤシの木は一本」
「男は店長だけってことですか……」
「このままではまずい……ツテをたどってみてくれないか?臨時のバイトがいないと厳しい」
莉子と美奈子は一斉に携帯を操作する。
「駄目です。僕の知り合いは全滅ですね」
「私もですぅ。給料一.二五倍って言ったら誰か食いつくと思ったんですけど……」
「……ん?俺、給料の話なんかしたか?」
しかも明日は日曜日。一番混む曜日だ。最低でもフロアに四人はいないと本当に辛い。
「まあ、仕方ないな。俺が何とかしよう。二人はもう帰っていいよ、大丈夫だから」
「はい……じゃあ」
「僕らは失礼しますね」
二人は帰っていった。
「さて……とは言ったものの、俺の人脈で何とかなるものか……」



次の日。
十一時開店のエアーズに、十時に来た美奈子と莉子は少しホッとした。女の子が二人、満人から説明を受けていたのだ。
「お、来たな」
「あ、莉子に『光』じゃ……」
美奈子は焦って女の子のうちの一人の口を塞ぐ。そして小声で注意する。
「秘密ですよ!僕が『光』ってことは!」
「ん?知り合いか?美奈子ちゃんに莉子ちゃんと亞花里は」
満人が呼んだ二人のうち、一人は中本亞花里。どうやら知り合いだが、連絡先を知らなかったのか、昨日電話したときには彼女は呼ばなかったらしい。
「まーねー。ちょっと」
「そうかそうか。んじゃ、そういうことで亞花里は美奈子ちゃんからサポート受けてくれ。制服は二階のロッカーに入ってるから。鍵はこれだ」
「そういうことって?」
「はーいはい。んじゃ『ひか』……美奈子、行こー」
「ああ、はい……」
美奈子は亞花里を連れて二階へ上っていった。
「うーん、美少女は画になるなぁ……」
「あの、店長」
「ん?」
「そこにいるもう一人の方は?」
「ああ、もっちり忘れるとこだった」
「すっかり、ですよね」
「朱雀ーぃ」
「ん」
「え!?」
「あら、莉子」
「何だよお前らも知り合い?つか朱雀、ここでタバコ吸うのやめてくれ」
「ええ、まあ……。久しぶり、朱雀」
「そうねぇ。まったく、こんなクソみたいな仕事を何でウチがやらなきゃなんないのよ……」
「クソって言うな!」
「うう……うわーん!ウチまだ入稿前の原稿が二十ページもあるのにー!」
「ヒャッハー!相変わらずいい声で鳴きやがるぜー!」
ケラケラ笑う満人に、喚く朱雀。聞くところによると、二人は高校の同級生だったらしい。
「よしじゃ、莉子ちゃんはコイツのサポートを頼むよ」
「あ、はい」
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