裏・俺の戯言

□半裏LIGHT JOKER〜朱雀の日常〜
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「何?奴抹消の報奨金がまた上がっただと?」
あるバーで柄の悪い連中が話をしている。全員、腕に覚えのある殺し屋だ。
「ああ。二億ドルを超えたらしい」
「……そうか……くく、消し時だな」
その中で、最も腕の立つ殺し屋が押し殺した笑い声をもらした。
「おい、奴を消しに行くのか?悪いことは言わん、やめておけ」
「お前、俺の視力と銃の腕を知らないのか?」
「いや、判っているつもりだ。だが、奴は銃の腕云々でどうにかなる相手じゃない。あいつはもはや……人外だ」
「ははは!さくっと殺してきてやるよ!二億ドルは俺のモンだ!」
「……忠告はしたからな」



学校の授業が終わった。今更勉強することなど何もないが、それなりに楽しいし生徒会もあって充実した毎日を送れている。
騎士団にいた頃もそれはそれで楽しく過ごしていたが、今は前よりも仲間が多い。この生活も悪くはないと思えるほどだ。
「……ま、以前と変わらないこともあるけどね」
独り言。実際には聞いている者が側にいるので独り言ではないのだが。
『例えば☆?』
制服のスカートのポケットの中から声がした。相棒だ。
「んー?そうね、今の状況とか」
『やっぱ気付いてたかコノヤロー』
また別の声が同じ場所から発せられた。もう一つの相棒だ。
付き合いは短いが、いくつもの死線を共にくぐり抜けてきた大切な相棒達。その形状は、刀。
「まぁね。あんな判りやすい殺気出してるんじゃ、いくらウチでも気付くわ」
南朱雀は、今は仮の自宅となっている愛佳の下宿に足を運んでいる途中で狙われている。
「でも詳しい場所は判んないわね。教えて」
『真後ろ☆五百五十メートルだね☆』
「へぇ。判ってんじゃない今回の殺し屋は」
五百五十メートルと言えば、アサルトライフルによる狙撃で風の影響を受けないギリギリの距離だ。
(多分報奨金が上がるのを待ってた奴ね。よほど腕に自信があるか、ただのバカか……使ってくるのはメジャーなAKS-74UとかM4A1かしら)
どちらにしろ、一発狙撃を受けてみれば判る話だ。腕も、性格も。
「!」
撃ってきた。消音器で音は抑えられているが、朱雀や亞花里ならその程度の誤魔化しは効かない。雑踏の中でも簡単に聞き分けられる。
朱雀としては、一般人は巻き込みたくない。大通りが近くにあって人が多い中撃ってくるのだから、腕はいいはずだ。放っておけば確実に朱雀に当たるだろう。それはいいのだが、回避をすれば巻き込んでしまう可能性が高い。おそらくは見通しのいいビルの屋上などから撃ってきているだろうから、うまくいけば地面に激突するが、射角がなければ回避した先の一般人に当たるかもしれない。
だが、まともに当たれば少々痛い。当たりどころによっては致命傷になってしまう。それはまずい。
よって、朱雀は防御することにした。多少リスクは伴うが、しょうがない。
弾の速度や種類、その他諸々知るために朱雀は振り向く。
(……遅い……?)
明らかに弾が遅い。狙撃銃で撃ってきたのならその銃はどう考えても欠陥品だ。
朱雀は難なく素手で銃弾をキャッチした。そのような所行を軽く行えるのは朱雀だからだ。人間が同じことをやろうとすれば下手をしたら死ぬ。
『どう☆?』
「これは……45ACP弾……?嘘でしょ?」
『そりゃ驚きだなコノヤロー』
「でも納得かもね……」
弾が遅いとは思ったが、まさかこの弾だとは思っていなかった。45ACP弾と言えば、ハンドガンの弾である。五百五十メートルという距離でハンドガンを用い狙撃をするには相当な腕が要る。
「消音器をつけられるなら……王道はM1911A1かSOCOMかUSPか……いずれにしろ相当な技術ね。まさに職人技だわ」
今まで出会ったことがない程の狙撃の達人。それがハンドガン一丁で襲ってくるはずがない。おそらくこれで動きを止めた後に本命が来るはずだ。しとめられればそれはそれでラッキー、ぐらいに考えているのだろう。
『お、第二波☆』
今度は弾も銃も狙撃向きの本命だ。消音器はつけられていないが、多少の加工をして一般人に気付かれない程度の減音はされている。そのくらい朱雀には判る。
「でも、甘い」
朱雀は念力で銃弾を受け止めた。ハンドガンの弾が飛んできた角度から、相手の場所を特定できたのでこのくらい朱雀や火鳥なら簡単だ。
止めた弾を掴み、今度は狙撃手を捜す。すぐに見つかった。遠いが、判りやすい場所にいる。
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