続々・LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜姉妹の絆〜
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「輪」のマジェスティ=ドライズだ。本編では今、俺は休暇を取っていていないが、どうせ俺がいても中本竜二には手も足も出ないだろうな。臆病で悲観的な性格だと、皆に言われるよ。
じゃ、五十八気絶目、始まるぞ。



空はその場からできるだけ動かずに振り返った。
「心配するな、ここらに念飛符はバラまいてない」
「…………」
確認を取ろうと読心術を使ってみたが、効かない。竜二は強力な精神壁(読心術を防ぐために張る、心のガード)を張れるらしい。
「どうした?」
「……中本、竜二さんですね。精神壁がお達者なようで」
「顔知ってるくせに何言ってる」
「ワインさんのような力があるかも知れないですから……本当に本人か確認したかったんですよ」
「そうか、お前はその年で読心術を使えるんだったな。いいぜ、精神壁を解いてやる。その上で読むかどうかは、お前の自由だ」
「……?」
罠かとも思ったが、空は読んでみることにした。
「……!?」
心を読んだと思った瞬間、空は強い風が吹く荒野にいた。周りには人間の白骨が山ほど積まれている。
「ここは……」
まさか念飛符だろうか。だが、地球上にこんな場所があるなんて聞いたことがない。
そして右手に違和感を感じた空は、何気なく自分の右手を見てみる。
「!?」
皮と肉が溶けて骨が見えている。
右手はおろか、左手や足、顔まで溶けてきた。一体何が起こっているのか。
「あ……!!……!?」
どんどん体が崩壊していく。後に残るのは、骨だけ。
「あああぁぁぁぁ!!」
「落ち着け」
その声と同時、空はいつの間にか見知った町の見知った道にいた。体は全くの無傷だ。
「はぁ……はぁ……な、何が……」
「俺が精神壁を鍛えたのは情報を漏らさないためじゃない。読んだ奴の心が崩壊しないようにだ」
「…………」
「発狂どころか失神すらしないとは、お前もなかなか強い心を持っている。殺すには惜しい」
「殺す……つもりですか」
「いや。邪魔をしないなら見逃してやる」
「残念です」
「そうか。こっちのセリフだがな」
竜二はすかさず空の額に念符を貼り付けた。
「!」
マズい。空がそう思った瞬間、護符は発動していた。
「心配いらん。どの道殺すつもりはない」



「……油断しました」
空が飛ばされたのは、アフリカはエジプトの砂漠。簡単には帰れそうにない。
「携帯は……通じませんね」



「完敗……。こんなにあっさりやられるなんて、私もまだまだ修行が足りない」
科奈理は念固符で動きを封じられ、その状態で放置されていた。勿論人の来ない地味な場所だ。
「込められた『念』が多すぎる……解放される頃には全て終わってそうね」
それにしても、竜二はあれでかなり優しい。極力誰も殺さないようにしているのがよく判る。朱雀の時は、多少大怪我をしても死なないと踏んだのだろう。吸血鬼の誇りをかけて闘いを挑んできた朱雀に手加減するのは失礼だとも思ったのかも知れない。
「ごめんなさい、私はリタイア……頑張ってね、亞花里」



圭と亞花里は二人で立ち往生していた。
「どう動く?」
「そうね……アンタの力、浮けるんでしょ?」
「だな。どっかにはっつけてあるなら、地面や壁に触れなきゃいい。よし、しっかり捕まってろよ」
「うん」
圭は亞花里を抱え、縮地で上空に移動する。



竜二は、笑華が軟禁されている部屋に能力で帰ってきた。
「あ、お帰りなさい、お父さん」
「おぅ、ただいま。笑華、ちょっと出ないか?」
「え?」
「実はな、亞花里を説得してほしいんだ」
笑華はむしろ、亞花里が竜二を説得してくれることを望んでいたのだが、どうもそうはいかないらしい。表には出さないが、内心で舌打ちをする。
「お父さん、私達は、貴方についていかないとは言ってないんです。ただ、少し強引すぎませんか?」
「笑華」
竜二は笑華の目をじっと見る。
「……行ってくれるな?」
「…………はい」
笑華は頷いてしまった。竜二は、催眠術にも長けている。
「これ、返してやるよ」
言って、竜二は何やら小さな黒い塊を笑華に渡した。
「これは?」
「『闇』の一部だ。俺が持ってりゃ能力無効化の効果で『闇』全体が使えなくなるって仕組みだな」
「そんなことが……。貴明君?」
『……我が主』
「……よかった。無事で」
「よし、じゃ、笑華。亞花里を頼む」
「任せて下さい」



探せども竜二も笑華も見当たらない。ついでに、「輪」のメンバーや空までいない。皆竜二の罠に引っかかったのだろうか。
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