続々・LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜楽器!〜
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え、僕?わぁ、やった!こんな重要な役任されるなんて!この影の薄い僕が!
僕の名前は太田次郎。名前が公開されてる中ではトップクラスの影の薄さなんだよね……この機に覚えてくれると嬉しいな。
じゃあ、六十二気絶目、行ってみよう!



「……ふぅ」
満人が読み終わったマンガをパタンと閉じた。横では勇気が机に肘をつき、その手に頬を乗せて空いている手で携帯をいじっている。
「そうだ。バンドを組もう」
「…………」
ツッコんでほしいに違いない。勇気はそう判断した。
「そんな京都に行くみたいなノリで決めないでよ」
「バンド名は、『リトル○スターズ』だ」
「…………ああ、間違えたかな」
満人とは腐れ縁なのである程度のことは判っているつもりだったが、どうやら違ったらしい。悔しくも何ともないが。
「……ツッコめよ」
「……難しいな、お前って」
初手は本気だったが、次手はボケだったらしい。勇気にはよく判らないので、どうせオタク的なボケなのだろう。
「で、今度はそのマンガに影響されたわけ?」
「まあな。うん。いいよ。何かカッコいいじゃん、バンド」
「そうだね。頑張ってね」
「ギターとベースは決まったし、後は……」
「ん?」
バンドは満人が今決めた突拍子のない企画というか計画のはず。それなのにすでにメンバーが二人いる。まさか病弱な弟に楽器をやらせるわけはないだろうし、どうやら勇気は確定らしい。
「……はぁ」
仕方ない。別に楽器に全く興味がないわけでもないので、満人が飽きるまで適当に付き合うことにする。
「で、俺はどっちなわけ?」
「ん?ベースだよ」
「そう」
確か父親が学生時代に使っていたという古いエレキベースがあったはずだな、と勇気が考えていると、満人がすくっと立ち上がった。
「どうしたの?」
「生徒会室行ってくるよ。サボったら殺されそうだし、生徒会役員にバンド参加できる奴いるかも知れないし」
「ん。じゃ俺は帰るよ」
「おう。またな」



生徒会室の扉を開けて満人が中に入ると、満人以外のメンバーは既にそこにいた。
「遅い」
朱雀が不機嫌そうな顔で言い放った。
「悪い悪い。ちょっと考えることあってさ」
「お前が考えたら事態が余計に悪い方に向かいそうだな、はは」
圭がまとめた書類をとんとんと机で揃えながら言う。
「ひどいっすね……いや、このメンバーに聞きたいんだけど、」
「俺はパスだ」
「私もいいです」
圭と空は読心で先回りして断った。満人も心を読まれたことを察したらしく、そのまま話す。
「バンドやらないか?」
「バンド?」
「ああ。今のところ俺と勇気が参加決定してるんだ」
「俺はいいや。一応卓球部部長だし」
「私めんどくさーい」
将士と愛佳が降りた。
「私やろうか?」
「あ、私も」
「ウチもやってみようかしら」
香織と笑華と朱雀がノってきた。
香織や朱雀はともかく、笑華がノるとは思っていなかった満人は意外そうにしながら自分のパイプ椅子を設置する。
「ほんとか?楽器、何かできるか?」
「ごめん、初心者」
「いや、俺もだから。やりたいのあるか?」
「いえ、特にはありませんね」
「じゃ俺が決めていいか?」
「いいわよ。皆ゼロからなら一緒だしね」
「うーん、笑華はキーボードっぽいよなー。器用だし。朱雀は体力勝負のドラムで、香織は俺とツインでギターするか」
決めるのが早い。その方が準備もしやすいだろうが。
「ボーカルはどうすんだよ。お前がやんのか?」
「はは、まさか。せっかく女がいんのに男が歌ってどうすんですか。笑華か香織、頼めるか?」
「え?」
「ああ、いいよ」
「ええ??」
「ウチは?」
「いや、ドラム叩きながらボーカルは無理っしょ……」
朱雀ならば体力的には問題ないだろうが、歌うには固定したマイクのところに顔を近づけなければならない。体の向きなども激しく変わるドラム担当は、コーラスはともかくボーカルには向いていない。
「か、香織……」
「緊張しなくてもいいよ、笑華普通に歌上手いしね」
「はあ……」
「よし、決まりだな。ところでよ、今日顧問はいないのか?」
「あ、お父さんは職員会議です」
「ふーん」
「ほら満人、仕事しろ仕事」
「うーぃ」



笑華と香織が家に帰ると、既に亞花里が夕食の準備を始めていた。
「ただいまー」
「ただいま帰りましたー」
「お帰りぃ。今日の夕飯はチンジャオロースよ」
「おぉ〜」
「亞花里、制服着替えなさい。汚れたら厄介ですよ」
「ダイジョブダイジョブ〜エプロンするから」
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