続々・LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜一つの身体に二つの魂〜
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俺か。ここで出番が回ってくるとはな。
俺の名前は境目刃場。まぁ、いいことなんだが、戦いがないおかげで俺達「輪」のメンバーは出番が減ったな。ヤーヴォシィの奴、自分だけ出やがって。
じゃ、六十五気絶目、楽しんでくれ。



将士には気になることがあった。
麗音のことだ。
正確には、麗音のもう一つの人格。
一度、カッとなって麗音の顔を叩いた時に、麗音がかけている眼鏡が吹っ飛んだ。そして眼鏡を外した時の麗音は、

別人だった。



「……斬合ぉ」
将士はだらーんと自分の机に体重をかけながら、前の席の麗音に話しかけた。
「ん?何?」
「話があるんだが」
「うん、何?」
「…………」
はてさて今ここで話してもいいものか。一度ブラック麗音が現れた時、眼鏡をかけてホワイトに戻った麗音は恥ずかしそうに急いで教室から出ていった。あまり他人に知られたくないのだろう。
「お前の……その、眼鏡のことなんだ」
「…………ああ、うん……」
やはりあまり気乗りしない話題らしい。
「いや、話したくないならいいんだ。悪かった」
「う、ううん、待って」
「?」
「放課後……屋上で話そう?師堂君になら、私話してもいいよ」
「あ……おう、ありがとな」
「ううん。じゃ、先行くねっ。師堂君も早くしないと遅れちゃうよっ」
「ああ」
次の授業は移動教室。化学実験室に行かなければならない。LJ学園は無駄に広いので、徒歩だと休み時間をフルに使ってギリギリ間に合う程度。そろそろ教室を出ないと走っても間に合わなくなる。
将士は化学の教科書とノート、筆記用具を持って教室を出た。本来戸締まりは最後に教室を出た者が担当するのだが、三年A組の場合は移動の時も圭がずっと教室で寝ているので、鍵はかけずに戸だけ閉めていくのが暗黙の了解になっている。



放課後。将士はとりあえず寝ている圭を起こした。
「起きろ、授業終わったぞ」
「ああ……?あと四時間……」
「フザけんな。俺は遅れて行くから、生徒会頼んだぜ」
「うーぃ」
机に突っ伏したままひらひらと手を振る圭。本当にちゃんと仕事しに行ってくれるのだろうかと心配しながら、将士は屋上に向かう。
好きな女の子と屋上で二人きり。告白にはこの上ない状況だが、将士は何故か今はそんな気になれなかった。



「……あれ?まだなのか」
屋上に着いた将士は辺りを見回したが、人影がない。どうやら先に着いてしまったらしい。ホームルームが終わるなり麗音はさっさと教室を出ていったので、先に屋上に向かったのだとばかり思っていた。トイレを我慢していたのだろうか。ひょっとすると、部活の方に一声かけに行ったのかもしれない。
フェンスにもたれかかって座り込む将士。なんだか落ち着かない。
しばらくすると、屋上の扉が開いて麗音が出てきた。
「ごめん、部活に行ってて」
「ああ、いや。部長だもんな。悪い、時間とらせて」
「いいの。いつかは話さなきゃと思ってたから」
言って、麗音は目を伏せおもむろに眼鏡を外す。
「お、おい……」
目を開けた麗音は、やはり別人だった。纏っている雰囲気がそもそも違う。
「アンタは、『こっち』のあたしのこと、あんま好きじゃないんだろうな」
言いながらブラック麗音は苦笑していた。将士は唖然としている。
「動揺してるな。無理もないか、ははは。ちょっと長い話になるけど、いいか?」
「お、おう。話してくれ」
ブラック麗音は頷いた。
「まず、自己紹介をしようか」
「?何言ってんだ。お前は斬合麗音じゃないのか?」
「違う。あたしの名前は、斬合美音。ホワイトなあたし……斬合麗音の、双子の姉だ」
「???」
「意味判んないって顔だな。順を追って話すよ。本来、元々の人格はあたし、美音の方なんだ」
「へェ……意外だな、麗音の方だと思ってたよ」
「学校じゃいつも麗音だからな。でも当然だろ?何か手を加えた方……あたしなら、眼鏡をかけるだけだけど……そっちが仮初めの人格だってのが、普通じゃないか?」
「まあ……そうだな」
ブラック麗音……美音は、口元に微笑を浮かべながら話す。その様子に将士は薄気味悪さを感じていた。
「あたしの双子の妹、麗音は本当なら存在しなかった」
「何だって?」
「奇形膿腫って病気、知ってるか?」
「へ?えっと……何かのできモンか?」
将士は膿腫という言葉から適当に推測して言ってみた。
「まあ、平たく言えばそう。できものだ。具体的には、双子として生まれるはずだった人間の身体の一部が、何らかの理由でもう片方の身体の中に入っちまう病気だ。手や足、目、内蔵も入ってることがある。その身体の一部はゴムボールみたいな膜で包まれてるが、産まれた方が成長するにつれて一緒にでかくなるから、いずれは手術で除去しなきゃならない」
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