続々・LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜言葉の力〜
1ページ/5ページ

へっへ、俺の名前はペス人!ペストって読むんだぜ!
沖津空の友達の黒いネズミだ。まぁなんつーか、居候だな。いつかこの家乗っ取ってやるぜ、へっへっへ!
六十九気絶目、ドカーンっ!



確かに、この能力は隠密に向いている。誰にも気付かれずに何かを盗み出したりするのはまさに十八番だ。捕まっても、すぐに逃げ出せる。
だが、捕まってしまうことすらなかなかないが、捕まった時に必ず言われる言葉がある。
「死ね」
と。



「うはははははは!」
青空の集会場でテレビゲームに興じているのは、今野真、天上刀子、速霧海、マジェスティ=ドライズ、あとは何故いるのか、南朱雀だ。ちなみにテンションが高いのは真だけである。
今は格闘というか、四人まで参加できる対戦ゲームで遊んでいる。真、海、マジェスティ、朱雀が参加。
「っしゃあぁ!もらったぜぇ、あァ!?」
真のキャラが海のキャラに必殺の一撃を加える、その瞬間。
「死ねコラアアァァァ!!」
と叫んでしまった。
刀子は「うわ、ヤバ……」と手を半開きの口元に持っていき、真は言ってから気付いたのか固まってしまった。
「「?」」
マジェスティと朱雀は訳も判らず顔を見合わせる。
海のキャラ、死亡。
そして海はコントローラーを床に置いて立ち上がり、腰のナイフを抜いて切っ先を真に向けた。
「お、おいおい何してるんだ!」
マジェスティが慌てて止める。当然だ。
「……。その言葉は、嫌いです」
「ち、違うだろ、ゲームだろ、あ!?」
珍しく真が焦っている。無理もない。海は普段からは想像もできないようなまがまがしいオーラを全身から放っているのだ。
「ね、海、落ち着いて?このバカの言うこといちいち真に受けてたらキリないよ?」
刀子が必死に説得している。
「……なら、ここで殺しておけば、二度と言葉を発しません」
「なあぁ!?」
バカと言われたことに抗議しようとした真だが、海の爆弾発言に顔を青ざめて再び怯える。
(……よく判んないけど、止めればいいのかしら)
そう考えた朱雀は、海のナイフを念力で弾き、自らキャッチした。
「……」
海は朱雀を無表情のまま一瞥し、予備のナイフを取り出す。
「…………」
朱雀はまた念力でナイフを自分の手元に持ってくる。
「…………」
海は再び予備を取って構えた。
「一体いくつ持ってんのよ」
「………………」
無駄な努力と悟ったのか、朱雀は肩をすくめて海にナイフを返した。
長い前髪のせいで目は隠れているし、精神支配は使えない。念力で体を縛るくらいしか止める手段はなさそうだが、めんどくさいし縛るという行為もあまりしたくない。
「とにかく落ち着いてくれ。一体どうしたんだ」
朱雀の次に落ち着いているであろうマジェスティが海に問う。
「私は落ち着いています。落ち着いた上で、殺す気なんです」
「余計にタチが悪いだろう」
とにかく、とマジェスティが立ち上がっていた海を座らせ、ナイフを取り上げた。
「どうしたのか説明してくれ」
「真が私の嫌いな言葉を言いました」
「殺すくらい嫌いな言葉なのか」
「ええ」
マジェスティは刀子の方を向き、口パクで
「『死ね』?」
と訊いた。刀子は頷く。
海はまだ真に向けて「てめェここに二人きりだったら一瞬で殺してるんだぜオーラ」を出し続けている。無表情のままなところが一番怖い。まるで黒七星だ。「輪」のメンバーで黒七星を知っているのは心葉と鈴だけだが。
「まぁ、その言葉を言ってしまったのは真が悪いな」
「はぁ!?」
「いいから謝れ。死にたくないならな」
マジェスティが言った瞬間、海の顔がぐるんとマジェスティの方を向いた。
刀子は「やっちゃった……」と額に手を当てている。
「あ、いや」
「貴方もその言葉を言うのですか」
「悪かった!軽率だった!」
必死になって海を止めるマジェスティ。
その様子を見て朱雀は、
(ゼルゼラスは海と会わせちゃいけないわね……)
と思うのだった。



「落ち着いた?」
「私は最初から落ち着いています」
刀子が海に温かい紅茶を淹れてきて、それを海が一口飲んでいた。海の前では真とマジェスティが正座で大人しくしている。朱雀はあぐらをかいてのけぞり、手を後ろで支えにしている。
「前から思ってたんだけど……訊いてもいいかな?」
「私がその言葉を嫌いな理由ですね」
「え……うん」
先回りされて、一瞬戸惑う刀子だった。
「……私が、いつ『道』に入ったかは知っていますか」
「うん。確か四年前よね」
ちなみに刀子は八年前。「道」の中ではかなり古株だ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ