続・LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜夜の住人達〜
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…………あっ。
寝てた……。
折角タイトルコールさせてもらえるっていうのに。
やあ。僕は「渡し屋」光瀬渡馬。クサンチッペとか若い婆さんがいるおかげで少しだけど出番もらえてちょっと嬉しく思…あ、どうでもいい?んじゃ、二十八気絶目、レッツゴー!



「ふんふんふふーん♪」
鼻歌を歌いながら町を歩くのは「血に浸る騎士団」の一人、西虎太郎である。
「ヨーロッパやらアメリカも悪かないけど、やっぱ日本人が一番好みやなー。俺が元々日本人やからってのもあるんかなー」
歩きながら品定めをして気に入った女の子に声をかけ、一緒に遊ぶのが虎太郎の毎日の過ごし方だ。この時、あえて吸血鬼としての力である精神支配は使わない。ミスをするのもまた一興なのだそうだ。
「んー、よっしゃあの子にするかな。へーい、そこの姉ちゃーん!」
声をかけられた女の子は呼ばれたのが自分だと判っていないようで、虎太郎の声を無視した。
「なーアンタやって!無視せんといてーな」
「アァ?」
女の子は超不機嫌そうに振り返る。虎太郎は一瞬たじろいだが、構わず続けた。
「俺とどっか遊びに行かんかー?な!」
「いいわよ」
ナンパの成功率はそれなりに高いが、ここまであっさり受け入れられることはまずない。虎太郎は若干不審に思った。警戒しつつそれは表に出さない。
「ただし」
(ん、やっぱり何かくるか)
「私に勝てたらね」
女の子の髪が鋭く尖り、虎太郎の眉間に高速で伸びていく。
虎太郎が声をかけたのは、クサンチッペの「覚醒」を受け能力を授かった人間の一人である、間桐愛佳だった。愛佳はいつも使っている方法で虎太郎を追い払おうとしたのだ。
いつもはナンパしてきた男にギリギリ当たるか当たらないかのところで髪の槍を寸止めするのだが、今回は少し違った。
髪の槍の先端から相手の眉間まで若干の余裕がある。それも数センチ程度なのだが、常なら数ミリだ。最も大きな違和感は、愛佳の意志に関係なく髪が止まったことである。
虎太郎は人差し指と親指で愛佳の髪の槍を挟んで止めていた。
「おもろいチカラ持っとるやん?」
「……何者」
「いや、別に何者とかどうでもえーんやけどな」
虎太郎は口を開けて一般人より長い犬歯を愛佳に見せつけた。
「これこれ。判る?きゅーけつきってヤツやん」
いつも誘った女の子にはこういう風に正体をバラすが、信じてくれる人はいない。ただ単に話のタネにするだけだ。
しかし、異常な状況をいくつも経験し、何が起こっても不思議ではないと考える愛佳は虎太郎の言葉を信じた。
「吸血鬼……またエラいもんが出てきたわね……」
「お?お?姉ちゃん信じんのか?」
「嘘ついてもあんたにメリットないでしょ」
「話のタネになる」
「あっそ」
「で、どうよ?お茶してくれるん?」
この自称吸血鬼には自分では勝てない。そう直感で感じた愛佳は、「負け」を認めた。
「…………いいわ。付き合ったげる」



沖津圭はスーパーで安売りの米を買うため、街を歩いていた。米はそこそこ重いため、他の荷物は財布のみだ。携帯も家に置いてある。
と、圭は違和感に気付いた。
集中していなければ、読心術は対象の大雑把な喜怒哀楽くらいしか判らない。それでも、癖で常に読心術は使ってしまうので、通行人の感情は判るものなのだ。
しかし、目の前から歩いてくる少女。彼女には読心術が効かなかった。どんなに集中しても感情のカの字も見えない。
何かあるとは思いつつ、厄介事に巻き込まれるのは嫌なので無視してすれ違おうとする。
そしてすれ違いざまに、少女は圭に声をかけた。
「無視するの?」
アウトだ。圭は頭を抱えたくなった。こうなっては無視しても向こうから突っかかってくるのは確実だ。少女は振り返って圭の後を追ってくる。
縮地で逃げる、という選択肢もあったが、読心が使えないために何を考えてるか判らない以上、逃げるのはあまり得策とは言えない。
「……何だよ」
「無愛想ね」
「俺は今忙しいんだよ」
「手ぶらなのに?」
財布はポケットに入っているので、少女からは見えないらしい。圭はポケットをぽんぽんと叩きながら言う。
「これからスーパーに買い物に行くんだよ。米が安売りなんだ」
「じゃ、ウチも付き合ってあげる」
「いらねェよ。一人で持ちきれないほど買いだめする気はない」
「話がしたいのよ」
「だったら後にしてくれ。売り切れちまったらどうしてくれんだ」
「……随分、イメージと違って庶民的でケチな奴ね。人間小っさ」
「ほっとけ」
歩きながら会話をしていたので、もうスーパーに着いてしまった。結局少女は買い物についてきたことになる。
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