続・LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜新米吸血鬼の苦難〜
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なぁ〜んとっ!!
三十といういかにも記念っぽいキリのいいところでタイトルコールを言わせてもらえるとは感謝感激雨霰!!
HAHAHAHAHA、楽しんでいるか読者の諸君!三十気絶目、スタァ〜ットッ!!
あ、私の名前は沖津貫太郎だ。よろしく。



吸血鬼になった間桐愛佳は夜の街を飛び回る。路地裏の喧嘩や酔っぱらいの暴力などを見つけたら遠くから髪で邪魔をして気付かれないように去る。陰の努力者だ。治安もよくなることだろう。
「今日もこの街が平和なのはこの『金糸の紡ぎ手』がいるからよ!」
一人で満足している様子の愛佳だが、それは人を捨てた哀しみを隠すための演技でもあった。
そんな生活が三週間も続けば、吸血衝動もはじめの頃に比べて大分抑えられるようにもなったし、輸血パックも自分で盗み出せるようにもなり吸血も三日に一回で充分になった。
本来、三日間我慢できるようになるには数十年かかるのだが、愛佳はどうやら素質があるらしい。ちなみに、「血に浸る騎士団」の四人は二週間ほどまでなら我慢がきく。
今日も今日とて夜の街を跳ね回る愛佳。この夜はなかなか止めるべき争いがないので暇そうだ。
「ちょっと休憩しようかな」
持久力は無限に近いので休憩は必要ないのだが、気分の問題だ。愛佳は一際背の高いビルの屋上に着地して月を見上げた。
「いー夜ね……」
愛佳は最近、独り言が多くなった気がすると思っていた。それもしょうがないと考えていたが。
少しのんびりしていると、背後から足音が聞こえた。
「誰?」
振り返らずに言う。返答は、聞きなれた声だった。
「猫的SOSを辿って来たんだが、どーやらココに猫はいねー。どーゆーことか、我が猫レーダーもついにポンコツ化してしまったか、くかかかか」
聞きなれた声だが、口調は全く違っていた。まず、愛佳の質問に対する返答になっていない。
「誰よアンタ……」
今度は振り返りながら言った。
「空ちゃん!?」
「ノンノン。我が輩の名は沖津空ではナッシング。我が名は沖津夕。空っちのもう一つの人格、いわば分身だな、むへへ。ところでまっちん、お前から不幸のニオイがするゼ」
「うっ……何よいきなり出てきて無駄に的確に私の状況を言い当てるなんて」
外見はまるっきり空と変わらないが、キャラが全然違う。確かに別人と考えてよさそうだった。
(……ん?別の人格……?)
夕が空の分身なら、元々は一人のはずだ。今知り合いに自分が吸血鬼だということは知られたくない。
「退散っ」
「待つべしまっちん」
去ろうとする愛佳の目の前にコンクリートの壁が下からゴバッと出てきた。
空の能力、「地形変化」は夕も使えるらしい。
「ワタクシの記憶は空っちには残らないから安心されよ。だいたい、もう見られてるんだから今更逃げても同じだと少しは頭を捻れ単細胞脳」
「アァ!?」
何か知らないがけなされている。というか、心も読まれている。読心術も空並に使えるということだろうか。
「残念無念、オレ様の読心術は空っちどころかちっちぇー兄貴も遙かに凌駕。隠し事は無駄に近けーゼまっちん」
「つーか、何よそのまっちんって?」
「猫的SOS信号を辿ってココまで来たが、まっちんが発してたんならゴメンナサイ。なんつーか、猫にも覆せぬ運命というものがある」
「ワケ判んないことベラベラ喋ってないで私の質問に答えなさいよ」
「しかし、空っちの中からいつも見ていたがなかなかいいカオしてるな。惜しむらくは猫属性が皆無というところか。足りねーよ、まっちん」
「だから……意味判んないんだけど。……もう私、そろそろ行くわ。付き合ってらんない。今もどこかで喧嘩があるかも知れないし」
「うおー!!吸血鬼になろうとも大事な何かを守ろうとするするするするその姿勢!!たまらんゼ、まっちん!ワタクシ、絶望(かんどう)の涙で前がミエマセン……!」
「その字はかんどうって読まないよ。じゃあね」
言って、愛佳は跳び去った。
「何だったのかしら……」
「待つべしっつったろ、日本の言語を理解し切れていないのか。勉強が足りんな、まっちん」
「ひゃあ!!」
思わず悲鳴をあげる。いつの間にか夕が隣にいた。何故か浮いている。
「何よアンタ!さっさと空ちゃんのとこに帰りなさいよ!」
「空っちが寝ている間しか活動できない僕ちゃんが、空っちの寝顔を観察するなど愚のコッチョー。信じられん思考回路だ、頭蓋骨をかち割って中を見る価値ありまくりっぽいにゃー」
「あーもう黙れ!何しに来たのよ!」
「猫的SOSの発信源を調べてるみたいな。何となく貴様っぽいから超至近距離尾行を開始したっつー感じの雰囲気漂う六歳の夜」
「何言ってんのかさっぱり判んないわよ!!」
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