続・LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜吸血鬼のお付き合い〜
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……そうか。こんな仕事もあるのか。仕事なら、やらん訳にはいかないな。……自己紹介?俺はヤーヴォシィ=バリック。「輪」の幹部をしている。
……三十八気絶目。



最近、煙草の本数が増えた気がする。
箱から出して口にくわえる。勿体ないのですぐに火はつけない。くわえているだけである程度吸っている気になれるので、少なくとも三十分はこうしている。金はあるのでケチらなくてもいいし、特に自分の体に関しては害も及ぼさないのでガンガン吸ってもいいのだが、勢いよく減っていく煙草を見るのは何かもの悲しい。
そろそろ頃合だろうか。煙草の先端に視線を送り、火をつける。煙を肺に浸し、ゆっくりと吐く。
ああ、やはり美味しい。気分がいい。
「あんたさァ、別に来んのはいいけど、人ん家で煙草吸うのやめてくんない?」
「ここ、人ん家じゃないし」
「屁理屈言わないの」
「いいじゃない。減るもんじゃなし。ウチは気にしないけど」
「私が気にするのよ」
南朱雀は間桐愛佳の下宿先でくつろいでいる。「血に浸る騎士団」のアジトに使っていた部屋もあるが、この頃はよく愛佳の下宿に赴いて、あまつさえ泊まることも多々ある。
「つーか、あんたまだ煙草吸っちゃダメでしょ」
「ウチが何年生きてきたと思ってんのよ」
「百年単位?」
「それでいいわ」
「じゃあゼロ年ね」
「八百年よ」
「嘘くさ」
「嘘なもんですか」
「見た目の問題よ」
「ならウチずっと吸えないじゃない」
「吸わなくてもいいじゃん」
朱雀にとって煙草はなくてはならないものだ。吸血衝動を抑えるために一役買ってくれる。いつまでも煙草だけという訳にもいかないが、二週間しか保たないところを一ヶ月ほどまで延ばせる。
「百歩譲っても制服で吸うのはマズいでしょ」
「でも高校生で二十歳いってる奴とかいるでしょ?だいたい二十歳にならないと吸えないって日本の法律でしょうが」
「ここは日本。郷に入っては郷に従えって言うし、あんた元々日本人でしょ」
「アメリカじゃ煙草吸うのは十一歳から許してるわよ」
「何それ。法律が?」
「ううん、世間が」
「ダメじゃん」
愛佳は呆れる。だが、朱雀がこの部屋で煙草を吸うのは今に始まったことではない。もう諦めの境地に入っている。天井もヤニですっかり汚れてしまった。
愛佳は冷蔵庫から血液パックを取り出して、ちゅうちゅうと吸い始めた。盗むのは気が引けるが、そんなことを気にしていては生きていけないし、盗まずに我慢する方がよっぽど危ない。朱雀は羨ましそうに愛佳の血液パックを見ている。
朱雀は、よく血の話題を愛佳に振ってくるが、あまり愛佳は好まない話だ。
「絶対さァ、笑華の血って美味しいわよ」
「そんな目で私の親友を見ないでよ」
「処女の生き血はウチら吸血鬼にとって宝石に等しい貴重品よ?吸ってみたいと思わない?」
「思わない……つか、笑華って処女なの?」
「さあ?圭ってああ見えて結構意気地なさそうだし、まだ処女なんじゃない?」
「ふぅん……笑華処女かぁ……じゃあ笑華の彼氏は童貞かな」
女の子同士で処女だの童貞だのと連呼するのはあまりいただけないが、誰も見てないし、見ていてもこの二人は他人の目など気にしない。
「空の血はまだダメね。若すぎ」
「もうやめてよ……つーか何で女ばっか?」
「女の血の方が基本的に美味しいからよ。あ、香織は美味しいかも」
朱雀はとっくに吸い終わっている煙草を能力で燃やし、二本目の煙草をくわえながら喋っている。器用なことをするな、と愛佳は内心で感心していた。
「ところで」
「圭の血はそこそこ美味しかったなー。ウチが人の血を吸うと勝手に『しるし』がついちゃうから無闇には吸えないんだけど」
「聞けよ。小龍の話だけど」
「ああ。何?」
小龍は一応吸血鬼に分類されるらしい。牙があるし、力も相当強い。ただ、記憶は全てない。吸血衝動もないらしく、沖津家で普通の食事をとっているらしい。また、龍が生前集めた様々な吸血鬼の能力も一切持たず、代わりに吸血鬼らしい弱点を全く持っていないとのことだ。聖歌も聖書も効かないし、日光も問題ない。十字架や銀にも反応せず、流れる水も効果はない。ニンニクも好んで食べるし、火も人間と同程度のダメージしかない。
「吸血鬼なの、あれは?」
「一応ね……一番吸血鬼らしくない吸血鬼よね。日光や流れる水に強い血統は多いし、つかほとんどだし、聖歌や聖書に弱い血統もほとんどない。でも、銀が効かない吸血鬼ってのは初めてだわ」
「銀ね……こないだ銀の混じったスプーン持ったら火傷してビックリしたわ」
「バカね。銀と十字架は全吸血鬼に共通の弱点よ。常識じゃない。ニンニクは迷信だけど、嫌う傾向が強いかな」
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