続・LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜一方通行〜
1ページ/4ページ

遂に四十まで来たってことで、この俺沖津修がタイトルコールをしろと作者からの命令だ。まァ別にいいんだが……今回、俺の出番はないらしいからな。何か複雑な気分だ。
じゃ、四十気絶目、始まるぞっ!



もう年も明けて、少なくとも十日は過ぎている。年末は紅白歌合戦やレコード大賞などを観て、同居人と年越しそばを食べた。面白くもない正月番組をだらだらと観ていると、始業式の日が来てしまった。そして、今日。この日の授業は確か何かの理由で午前中までだったはずだ。もう同居人も帰ってきているだろう。そう言えば、友達を連れてくるとか言っていた気がする。
そこまで考えて、学校をサボって今起床した南朱雀は洗面所に向かう。
愛佳と一緒に暮らし始めてまだ一ヶ月も経っていないが、もう大分慣れた感じだ。あれからやかましい兄貴も顔を出さないし、平和な日々が続いていた。
朱雀の部屋からは居間を通らずに洗面所へ行ける。いちいちおはようを言ってから顔を洗うのも億劫なので先に洗顔をすませる。
(流れる水に弱い血統って、こんな風に顔洗ったり、シャワー浴びたりお風呂入ったりできないわよね……)
のんきにそんなことを考えていると、朱雀に「あの」気配が近づいてきた。
ハッピーニューイヤーそしてグッモーニンっ!!マイスウィートシスター!とは言っても今まさにウキウキウォッチングの曲が高らかに流れんとしている時間だけれどね!いや朱雀がお寝坊さんなのは意外というかお約束というかちなみにボクは寝たいときに寝て起きたいときに起きるタイプさ!ああっこうやってボクらはお互いの知らないところを一つ一つ判り合っていくんだねっ感動だねっ。ボクは今日一日片時も離れず君と共にいることをココに誓おうじゃないかっ。じゃ!!」
「言った先から離れてるじゃないのよ!!」
いきなり現れて訳の判らないセリフを長々と吐き、居間へさっさと戻っていく火鳥に朱雀は思わずツッコんだ。
「!」
火鳥が振り返る。朱雀はミスった、と思った。
「そうかいそうかいそうだったのかい!ボクが居ないのがそんなに寂しいのかい!さあいざ行かん!ボクら兄妹の愛の礎を祝して焼き肉屋にて上カルビをつつき合おうではないか!」
火鳥は朱雀の手を取りズンズンと歩きだした。朱雀はうんざりしている。
「いいわよね……自分の都合のいいように物事を解釈できる奴って……」
「ねぇ〜いつ桃食べていいの〜」



という訳で、居間に連れてこられた朱雀。焼き肉屋ではない。愛佳に、笑華と亞花里もいた。笑華はともかく亞花里は何故居るのだろうか。
「新年の挨拶と先日の非礼の詫びを込めて……今回は桃を進呈奉らんと思ってねっ。さぁこのボクに最上級の感謝の意を示しながら心して食すが良いよっ」
桃など中本家では買わない。笑華と亞花里は心底嬉しそうだ。
「ありがとうございますっ」
「うむうむっ良きにはからいたまえっ。そして早くボクの分の桃を剥いてくれたまえっ」
「はいっ」
「火鳥ィ笑華をこき使わないでよ」
「仕方ないじゃないか自分で剥くと桃の汁でボクの手がべたべたになってしまうからねっ大変大変」
「何笑顔で自分勝手な理屈ほざいてんの……?」
「火鳥……心配いらないわ、オレの剥いた桃を食べるといい……もう半分食べちゃってるけど」
「亞花里……ボクの胸は君からの愛で既に溢れかえってしまっていて桃が入らないよ……っ」
「「よし!!」」
「何が」
亞花里と火鳥がお互いに向けて親指をグッと立てている。すっかり仲良しだ。
愛佳はそれを見て笑いながら桃を食べ、笑華は先に全ての桃を剥いておこうとしているらしくせっせと果物ナイフを動かしている。
朱雀が桃に手をつけていないのを見て、愛佳が問う。
「朱雀、食べないの?」
「ううん、食べるよ。ただ、ちょっとね……。火鳥、どういうつもり?」
「朱雀、今日は桃を食べるのに相応しい日だとは思わないか?」
「……まあ、いいわ。頂きます」
愛佳や笑華は、今一瞬火鳥が見せた全てを包み込むような柔らかな笑みに思わず見とれてしまった。亞花里は気にせず桃にガッついている。
「旬じゃないけどね」
「つか、先日の詫びって?」
「はっはっは、まさかまっちんがあの名高い『金糸の紡ぎ手』だとは知らなくてねっ何も知らずに襲いかかったボクに対する怒りを治めて欲しいと思うわけだよっ」
「別に怒ってないけどさ。でも、お詫びの品なのに『感謝しろ』って言うのは間違ってるんじゃないかな……」
もっともな意見である。だが、そんなことを火鳥が気にするはずもない。そもそも、朱雀に会いたいがために桃を持ってきたようなものなのだろう。新年の挨拶も詫びも理由付けにすぎない。
「ああそうそう、今日は朱雀に用があって来たのだけれどねっ。挨拶はついでさ!何やら話が横にそれてしまっていたが全く誰の仕業だろうねっはっはっはっ」
「お前だ」
「で、用件なのだけれど」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ