続・LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜姉のプライド〜
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ああ、悪いけど僕はあんまりこういうの好きじゃないから手短に済ませるよ。僕は……「輪」、の咲野心葉。一応肩書きは幹部らしいね。どうでもいいね。
じゃあ、四十一気絶目、楽しんでね。



香織が懐いてくれない。
いつもいつも笑華にばかりベタベタして、自分には寄ってきてくれない。
(オレだってお姉ちゃんなのに……)
例えば、学校の数学の宿題で判らないところがあった時。数学や英語に関しては自分は明らかに笑華よりも上を行くハズなのに、
『笑華〜ここって……』
『ここは判別式と軸と……』
という感じで笑華に聞きに行く。香織が悩む問題程度なら笑華でも軽く答えられるのでそこは問題ないのだが、笑華だって自分の勉強がある。その点自分は学校にも行ってないし、バイトの時間を除けばいつでも教えてやれる。
何故だろうか。嫌われているのだろうか。
(はっ!まさか雨の日にてるてる坊主の代わりってシーツにくるんで軒先に吊したの怒ってんのかな……それとも香織の歴史の教科書の人物画全部にまつ毛を描き足したから?いや、もしかして香織のマンガの中身とカバーごちゃ混ぜにして遊んでたのがバレた……?)
どれも誉められた所行ではないとは思う。しかし、そこまで怒るようなことだろうか。
「う〜ん……」
「どうしました亞花里?」
気づいたら、笑華が下からのぞき込んでいた。
「むぉっ!出たなオレのライバル!」
「は……?」
「あ……いや、歩きながらよそ見すると転ぶよ?」
「あ、はい」
そう。今は三姉妹と祖母で初詣に出かけているのだ。とうに正月は過ぎているが、まだギリギリで一月なのでよしとする。学生が冬休みをエンジョイしているとき、自分はバイトのシフトを入れまくり、稼げるだけ稼いでいたのだ。元旦も神社で巫女のバイトをしたし、初詣にも行けなかった。
「笑華っ早く行こ!」
「わっ、ちょっと香織……!」
香織が笑華の手を引いて早足で駆けていく。
「むむむ……」

「亞花里、どうしたのよ?」
「かなバア……ふん、かなバアは読心術持ちだから判ってんでしょっ」
「うふふ……まぁ頑張りなさいよ」
「言われなくても」
ある意味自分と一番深くつながっているのは、この祖母かも知れない。
そんなことはどうでもいいが、とにかく香織には自分が笑華よりも頼れるところを見せなければ。自分を見直したら、香織も少しは寄ってきてくれるかも知れない。
(可愛いわぁ)
と科奈理が思ったことを、亞花里は知らない。



やってきたのは、聖清神社。科奈理が巫女を勤めていた神社だ。
「じゃあ私は神主とか若巫女に挨拶してくるから。適当に遊んどいて」
「はい」
科奈理はさっさと行ってしまった。
「まずは?」
「お参りしましょうか。おみくじはその後です」
「うぃっしゅ」
うぃっしゅとは何だろう。新手のギャグか。



お賽銭を賽銭箱に投げ入れ、ガラガラを鳴らして手を合わせる。
(今年は一年間健康に、何か大きな事件に巻き込まれずに過ごせますように……)
笑華にとっては切な願いだ。
(今年は姉二人が私に秘密を作らず何でも話してくれますようにっ)
何かを隠していることは香織も気付いているらしい。
(今年は死にませんように)
笑えない。
そんなこんなでお参りを済ませ、おみくじを買いに行く。もう一月も終わりなので、人が少なくて歩きやすい。
おみくじをガランガランと振って、出てきた棒を見る。
「私十六番」
「オレ二十一」
「私は四番です……買ってきますね」
笑華が売場に歩いていく。
「四番と十六番と二十一番」
「六百円です……けど、あなたたち巫女様のお孫さんたちなんでしょう?半額にまけてあげる」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「はい、四番と十六番と二十一番ね」
「どうも」
笑華が帰ってきた。香織は無理だろうが、売場での会話は自分には聞こえていた。聴力は衰えていないらしい。
「十六番と、二十一番です」
「ん」
「ありがと」
開けてみる。
「よしゃっ!大凶よ!」
「え、何で喜ぶの」
「だって大凶なんて今時超レアよ?逆にラッキー!しかも一番悪いってことはこっからは上がるしかないってことだし、今から色んな悪いこと起きるってんならいくらでも立ち向かって……」
「はいはい……」
「香織はどうなの?」
「ん〜……お、大吉だ」
「へ〜いいんじゃん。笑華は?」
「え、小吉……です……」
「……微妙だね……」
「……微妙よね……」
「……微妙です……」
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