裏・俺の戯言

□夏〜その後〜
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よっぽどカズ兄さんに会いたいのか、ドアも閉めずにさっさと行ってしまった。
私はドアを閉めて、まだゲームに熱中している園美に呼びかける。
「さ、園美」
「……何かなぁ?」
「勉強、しようか」
「……やだあぁ〜……」





んー……ま、客はかやのだし、別に小綺麗にしてなくたっていいか。片付けんのめんどくさいし。つか、さっき見られたし。
しかし換気したはいいが、寒いな。これで空が曇ってたら絶対雪だね。百パー雪だね。
こっから絵美里ん家はそんな遠くないが、寒い中かやのを往復させるのはマズったか……いや、今年の夏までは年中宝捜ししてたんだし、むしろ冬は冬休みのおかげで普段よりよっぽど外にいる時間は長かったろう。別にいいか。
おぉっと、呼び鈴が鳴った。礼儀正しい奴め、英治郎なんか呼び鈴どころか許可もなしに入ってくるのに。
「かやのかー?」
「んー」
「入っていいぞー」
ガチャリとドアを開けて入ってくるかやの。どうやら走って来たらしく、少し息があがっている。
「走って来たのか」
「カズヤと遊びたかったから」
「……さよか」
やっぱりまだ「大切」は継続中みたいだな。
「うーん……」
悪くない。悪くないんだよ、顔は普通に可愛い。でも年齢的にかやのは射程外なんだよなぁ……。あと……六年。そうだな、最悪あと六年は欲しいところだ。
かやのは自分の生年月日を覚えていなかったらしいから、正しい年齢は判らんし、誕生日も施設に拾われた日だ。次の一月二十三日に十一歳になる、ということにしているようだ。
「?」
「小五か……」
さすがにまずいよな。いや、そんな趣味ないけど。
かやのは小五にしては小柄だ。だから実際は今は小四なのかも知れない。下手をすれば大柄な三年生だ。でも時折妙に大人な面も見せてくるし、いやはやなんとも歳の特定ってのは難しい。
「どうしたの?」
「ん?ああ、いや。ちょっとな」
かやのの歳がいくつなのかを考えてた、何て言いにくい。まぁ別にかやのだから歳がどうこうってのはいいが、下手してちっちゃい頃のトラウマを刺激しちゃ可哀想だからな。
「カズヤ、病気は?」
「ああ、熱は引いた。念のためにマスクはしてるけど、もう心配いらんだろ。ありがとな」
「念のためって?」
「かやのにうつさないようにだよ」
「ん。よかった」
こいつはこいつなりに心配してくれていたんだな。可愛い奴だよホント。もっと大人だったら彼女にしても全く差し支えない。しかし……香澄さんは会う度に「結婚式はいつにします?」ってニコニコしながら訊いてくるのは早とちりすぎると思うんだが。
さっさと俺の横を通り過ぎて居間にいるかやのをボーッと眺めてたら、ありゃ。
ありゃー!?
奴め、ベッドの下の俺の秘蔵コレクションを探り当ててやがる!
「おお……」
何がだー!
「あっほぉー!」
高速で近寄り光速で秘蔵コレクションその三を奪い返す。
「カズヤ、えっち」
「子供は見ちゃいかんのだこんなモン!勝手に探るな!」
「ここを見たら男の本性が判るって」
「誰に教わったんだよそんなこと!」
「イクミ」
「…………」
えーと。
あ、志摩の姉貴か!子供に何てこと教えるんだあの女は!アホか!
「つーかかやのは俺も含めて何でそんなに年上に顔が広いんだ……」
「……全部、カズヤから」
「は?」
いや、園美ちゃんは絵美里がいないと会えなかったろうし、志摩の姉貴も同様だ。別に俺から繋がってるわけじゃ……。
ん?
絵美里には俺がいないと会えなかっただろうな。志摩もそうだ。
うん。
俺から派生してました。
英治郎も君塚も園平も、かやのの年上の知り合いはみーんな俺からの繋がりだ。
「そうだな……」
とりあえず、秘蔵コレクションは隠し場所を変えておこう。ったく、志摩の姉貴が妙なこと教えるせいでこんなめんどくさいことに……今度会ったら滅茶苦茶言ってやる。志摩が実は同性愛者で、俺に惚れてるみたいで困ってるとかな。
あ、いやそれだとアレのことだし、「あはは、じゃあ付き合ってやってよ」とか言いそうだ。難しいな、あいつを何とかギャフンと言わせるには……。
「カズヤ、ゲームしよう」
「ん?ああ、ゲームな。いいぞ」
そんな無駄なこと考える暇があるならここにいるお姫様と遊びなさいってか。はいはい無駄にでかいだけの召使いは従いますよ、しゃーないな。
「かやの、寒くないか?暖房強くしなくていいか?」
「いい」
「そうか」
俺はちょっと寒いんだがな。こいつのことだから遠慮して我慢してるなんてことはないだろうけど。いっつも外で動き回ってたから寒さとか暑さに強いのかね。
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