裏・俺の戯言

□裏LIGHT JOKER〜歪んだ愛〜
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「あーもう!!ずっとあのままだったら幸せだったのに!!また姉妹三人で笑い合えたのに!!台無しじゃないの!!アホ!!バカ!!死ね!!!」
「亞っ……花……里っ…………」
「あぁそうよね死ねばいいんだわ!死んだら同じ所に逝けるもの!!修も一緒に死のうよ、ねぇ!?ほら、早く死ねよ早く早く早く早く早く早く早く早く!!」
修の意識が飛ぶ寸前、亞花里が修の視界から消えた。
「はぁ、はぁ……大丈夫か、修」
「げほっ、がはっ……、ああ、何とかな……」
圭が来て亞花里を殴りとばしたようだ。
「なァにィ……?圭まで来て。ああ、圭も一緒に死んでくれんのね?空は?」
「バっカ野郎……何でこんなになっちまったんだお前……!!」
むくりと起きあがって狂った笑いを向けてくる亞花里に圭と修は怖れの感情を抱いた。
「こんなに……?あはは、オレは変わんないわよ……ずぅっと、お姉ちゃんが大好きな妹。ずぅっと、妹が大好きなお姉ちゃん。今までも、これからも。死んでも、変わらないわよ」
「………………」
「何してんの。早く死ねよアンタら」
圭は再び亞花里を殴りにかかる。
「もう当たらないわよそんなの」
亞花里は軽々と避け、圭の手を取って投げた。圭は背中から床に叩きつけられ、一時的に息が止まってしまった。その隙に亞花里が圭の首を踏みつけ動きを止める。
「が……」
「修、次はアンタ?」
「く……っそぉ!!」



亞花里は右足で圭の首を踏みつけたまま、修のパンチや蹴りを避け、首を絞めて殺した。
「次に死ぬのは、圭……」
足をどけると、圭の息はもう止まっていた。
「あらら。まぁ、いっか」
亞花里は台所から包丁を持ってきて、寝ている笑華と香織の遺体の間に立った。
「ああ……やっと。やっと会えるわ……寂しかったぁ……。ごめんね空、一人だけ残しちゃって。小龍と頑張ってね。ごめんね修、圭。オレのわがままに付き合わせて。ごめんねかなバア。オレ耐えられなかったよ。ごめんねのんのん。またいつか会えるといいね。ごめんね、ごめんね、みんな…………!!」
亞花里は大粒の涙を流しながら謝り続ける。誰も聞いていない、亞花里の、亞花里だけの、独白。
「……さあ、逝こう」
亞花里は首に包丁を突きつけ、刺した。そして引き抜く。
血がすごい勢いで吹き出した。
「あ……!!あがっ……!!うぁ……!!」
亞花里は痙攣しながらその場に倒れ込む。大粒の涙はまだ流したままだ。
「死っ、死に……」
誰も聞いていない。誰にも届かない、声。
「死にたくっ、ない、よ……!!」
もう、間に合わなかった。



帰宅しすぐに異変に気づいた空は、小龍と中本家に行って愕然とした。
笑華の部屋は血塗れになっている。部屋の中にあるのは、笑華と香織、二人の兄の、死体。
そして笑華と香織の真ん中に仰向けに倒れ、右手で笑華の左手を、左手で香織の右手を握って笑っている、亞花里の死体。
「……うっ……!!」
吐いてしまった。仕方ないとは思うが。
「う……はぁ、はぁ……そんな……兄さん達……何で……」
「きゅうけつきにしたら、まだいきられるかもしれない」
小龍の血を分ければ、転化が可能だ。だが、人としてもう死んでいるのにまた生き返っても仕方ないと思った空は、
「……いいです。死なせてあげてください」
と言った。
「わかった」
「小龍君、代わりにお願いがあります」
「…………」
「私を殺してください」
空は、耐えられる自信がなかった。狂ってしまう前に、理性が残っている今のうちに死んでおくべきなのだ。
「小龍君は……朱雀さんの所に住んでください。ご迷惑をおかけします。朱雀さんにも愛佳さんにも、そう伝えておいてくださいね」
「………………」
小龍は無言で頷いた。
「ありがとう」
空は笑ってみたが、うまく笑えなかった。
「…………またいつか」
小龍は、念力で空の脳を潰して、殺した。外見では傷はないように見える。
「………………かなしい」
一人で佇む小龍。
「かなしい。かなしい。かなしい。みんなしんだ。かなしい、かなしい」
小龍は無表情で涙を流しながら、中本家を出て歩いていく。向かう先は、小龍自身も判っていなかった。
「かなしい。さみしい。こわい。さむい。いたい。つめたい。つらい」
笑華の自室では、全ての遺体が、笑っていたという。




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