裏・俺の戯言

□裏LIGHT JOKER〜恐怖!怪談大会〜
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「ひぃぃぃぃい!」
「あ、亞花里、まだです。まだ怖いところ入ってません」
亞花里は最後までもつのだろうかと笑華は心配になった。なんなら途中から塵未満が代わってやってもよいのだぞ。
「バカかてめェはお呼びじゃねェ。つか、自分で塵未満とか言ってる時点で終わってんな、塵として」
……すんません。
で、笑華は語り続ける。
「そうですね、ここから物語の主人公の名前を仮にソラちゃんとしましょう」
「何で仮にソラちゃんなんですか!私の名前と同じなんですか!」
笑華、無視。
本当はアカリちゃんにするつもりだったのだが、そんなことをするとこの怪談大会の副題通りに亞花里が失禁してしまうかも知れない。そんなの姉として恥ずかしいし、人様の家を尿で汚すなどもってのほかだ。それに亞花里も大好きな修の前でお漏らしなどしたくないだろう。笑華なりの優しさである。
加えて、普段から貧乳をバカにし続ける空へのささやかな復讐でもある。むしろ、こっちがメイン。
「その日は家庭科の調理実習がありました。ソラちゃんは遅くまで勉強で残っていたので帰る頃はもう真っ暗です」
だんだん語り方が堂に入ってきた。ノっているのだろう。
「ソラちゃんは帰り際、帰宅準備をしているとノートを家庭科室に忘れたことに気付いたんです。別にそれほど時間もかからないので家庭科室まで取りに行くことにしました……でも、今日はお勉強に精を出しすぎていつもより遅い時刻です。用務員さんに言われて初めて時間に気付いたくらいです。生徒はもちろん、教職員の方々もほとんど帰ってしまっています。誰もいない暗〜い廊下を家庭科室まで歩くソラちゃんは、途中で人の気配を感じました。それは後に捕まることになった不審者さんだったんです。ちなみに、麻薬による精神錯乱、また殺人の容疑です。勿論ソラちゃんは警戒します。後ろに感じた気配から逃げるため、素早く家庭科室に逃げ込みました。ですが、不審者さんはそれに気付いてしまったんです。ソラちゃんは隠れますが、不審者さんはあっさりとソラちゃんを見つけてしまいました。その右手には、月の光を反射して鈍く光る家庭科室の包丁が……。翌日、ソラちゃんは遺体となって家庭科室で発見されました。まもなく、不審者さんも捕まりました」
「何だそりゃ。ただの殺人じゃねェか」
「まあ、最後まで聞いて下さい。それからしばらく経ったある日、調理実習で家庭科室にノートを忘れた……そうですね、カオリちゃんが放課後にノートを取りに行きました」
「え、今度は私?」
「次の日、家庭科室にてカオリちゃんの遺体が発見されました。今度は……家庭科室中の包丁全てが全身の至る所に刺さった状態で」
『…………』
一同は黙り込む。
「それからです。家庭科準備室に全ての包丁が移されたのは。今でも、家庭科室にはソラちゃんがいると言われています。放課後に家庭科室に行くときは注意して下さい。もしも、準備室に片付け忘れた包丁があったら……ソラちゃんが襲ってくるかも知れません。その際、ソラちゃんはこう叫ぶそうです」

『よくも私を刺したなぁぁあ〜!!!』

「きゃああぁぁぁぁ!!いやあぁぁぁぁ!!うみゃああああああ!!」

「あははははは、大丈夫ですよ亞花里、作り話です」
「にしてはなかなかクォリティ高かったな……流石は文芸部で小説書いてるだけあるよ」
「待って待って。亞花里、亞花里。亞ー花ー里ー?」
亞花里は遂に気絶してしまった。香織がいくら呼んでも泡を吹いたままピクリともしない。
「あら……やりすぎました?」
「いいんじゃね?確かに怖ェ話だったけどよ、これで楽しめねェようじゃむしろコイツが悪りィ。無理に起こして聞かせんのも可哀想だしな……」
修も修なりに亞花里を気遣っている。まあ、まんざらでもないのだろう。
「次ァ俺が話すか」
圭の番が来た。
「こっから始まる話の主人公の名前は……仮にソラちゃんにするか」
「ちょ、何でまた……!」
「偶然だよ偶然。数ある名前のうちからランダムに選んだら『ソラ』が当たったんだ。それにほら、カタカナ表記だし」
「表記は関係ないですよ!」
「カタカナだったらアレだ、『うえ○の法則+』のソラかも知んねーだろ?」
「またマニアックな……!」
そんなこんなで、圭の話が始まる。
「ソラちゃんは、古賀満人という少年にメイドとして雇われてしまいました。終わり」
「いやあああぁぁぁ!!」
圭はたった三十七文字で空を恐怖のどん底に突き落とした。
これだけでは気が済まなかったのか、いくつか短いショートショートを語る圭。
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