裏・俺の戯言

□裏LIGHT JOKER〜If…もしかしたらの物語〜
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満人から鍵を受け取った朱雀は、莉子に連れられてロッカー室に向かった。
「よーしっと。じゃ準備するかな」
その時、エアーズの扉が開いた。
「すみません、まだ開店前なんですよー」
「いいじゃんちょっとくらい」
「ん、何だ信夫か」
店に入ってきたのは満人の実の弟である古賀信夫だ。今では病気もよくなってなかなかのイケメンに成長した。
「でさ、今日どうなったの?」
「ああ、臨時のバイト要員というおっぱいが四つほど増えておっぱいがいっぱいだ」
「外から亞花里さんの姿が見えたけど……あの人すごいハードな生活してるよね」
信夫はそんなこんなで亞花里と同じ大学に通っているのだ。亞花里は高校卒業後、一年間はお金を貯めるためハードスケジュールでバイト三昧の日々を送りつつ、免許を取得していたらしい。なので、今は大学四回生だ。信夫は三回生。
大学に入って数は減らしたものの、亞花里は今もかなりの数のバイトをこなしているらしい。
「そうなのか?悪いことしたかな」
「いいんじゃない?あの人、バイトが生き甲斐みたいなとこあるし」
「そうか。まあなら好意に甘えるとするかな」
「ところで着替え、結構時間かかるね」
「まあな。俺が変態だからちょっと凝った制服なんだよ」
「ふーん。見た目そう着にくそうでもないけどね」
自分で変態宣言したのはもうスルーらしい。
「そろそろ行ってみるか。一刻も早く朱雀と亞花里の制服姿を拝みたい」
満人は信夫の手を掴んでロッカー室に引っ張っていく。
「え、僕も?」
程なくロッカー室の前につく。満人はドアをコンコンとノックした。礼儀は弁えているようだ。
「終わったかー?どうだー?」
「ちょちょ、待ってよコレー……」
「何なのよぉサイズ小さくない?」
「店長ー、他のサイズないんですか?」
「ああ、今日の朝一に全部段ボールに詰めて特注した店に送り返した」
「えー?」
ドア越しに何やら変な会話が繰り広げられている。信夫は満人に少し意見した。
「兄ちゃん、わざとでしょ?」
「んん?何の話だ?」
亞花里は今の声で気付いたらしい。
「おややや?ノブ君いんの?んじゃちょっと入ってもらってアリかどうか判定してもらおうよ」
一瞬ドアが開いて、信夫だけ引っ張りこまれた。
「わわわわ」
「何だと!?まるで俺が見ちゃいけないような言い方じゃないか!!」
「駄目だよー。だってあんたは絶対アリとしか言わないし、いやらしい目でしか見てこないし」
部屋に入った信夫は少し苦笑した。
「ナシですね」
「何でだよ信夫!?」
「当たり前だよ。ここは喫茶店でいかがわしい店じゃないでしょ?これちょっと動いたら下着見えちゃうよ」
「それがいいんだろうがぁ!!」
「やっぱ駄目よねぇ。んじゃ仕事着にシンプルな服持ってきてあるし、オレそれ着るわ」
「う、ウチは……」
「やめて!制服でやって!!」
「それが駄目ならあんたには悪いけど帰らせてもらうわ」
「………………」



戻ってきたのは美奈子と亞花里だけだった。信夫は満人の淹れたコーヒーを飲みながら満人の開店準備を見ていた。
「あれ?莉子さんと南さんは?」
「それがね……」
「ふふふ、朱雀には俺が特別に用意した服があるのだ!」



「あの……朱雀……」
「駄目なのぉ!ウチがこれ着て出てかないとウチの恥ずかしい過去が赤裸々にぃ〜!」
なんとバニーである。バニースーツに網タイツ、ウサギの尻尾にウサ耳バンド。
「ウチの高校時代の恥ずかしい写真がぁ〜……」
「大層なこと言う割にはみみっちいね、意外と」
「騙されて美少女ゲームのコスプレさせられたって知られるよりマシだもん」
「ていうか、言ってるけど」
「あ」
「あれ、今気付いたの?」
「…………脱ご」



「何で!?」
「うるさーい!!帰んないだけマシと思いなさいよ!」
「だあぁー!!」
シンプルな服に着替えた朱雀を見て満人は涙を流した。演劇部で培った演技力は衰えていないらしいが、朱雀には効果がなかったらしい。
開店準備は整っていて、あとはプレートを「営業中」にするだけだ。信夫は開店前に帰った。
「お、もう時間か。じゃあ開けるぞ」
泣きやんだ満人は店の外に出て、プレートを「営業中」に裏返した。
ここから二時ほどまでがピークだ。気合いを入れる一同である。



開店後、最初に来たのは常連客だった。
「こんにちはー」
「お、笑華。いらっしゃい」
「アールグレイを」
「ほいほい」
笑華は今薬学部六回生。来年に国家試験を控えた受験生だ。
手早く紅茶を淹れた満人はさっと笑華に出す。
「ありがとうございます」
「いやいや」
「これからは試験勉強で、ここにもあまり来れなくなりますね……」
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