裏・俺の戯言

□裏LIGHT JOKER〜If…もしかしたらの物語〜
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「くぅ〜そうか、これからしばらくお前の萌え萌えな童顔が見られなくなると思うと寂しくて股が張り裂けそうだ」
「あ、胸は張り裂けないんですね」
話をしているうちに、客が入ってくる。
「んじゃ、勝手に飲んでてくれ。今からしばらく忙しいんだ」
「はい」
「ごゆっくりー」
客相手に総勢五人で忙しく動き回るエアーズのスタッフ。笑華は迷惑になってはいけないと、早々に帰った。
「ふぅー、一段落したなー」
「そうねー」
「しかし朱雀ぅ、亞花里も何で俺を苛めるんだよぅ」
「苛め、って……」
「いくら俺がMでもこんなの全然気持ちよくないぞぅ」
満人は泣きながら涙で「の」の字を書いている。
「店長ダージリンお願いしまーす」
「む、よし判った」
急にシャキっとして仕事の顔になる満人。てきぱきと作業をこなす。
「はいできたぞー」
「はーい」
莉子がてけてけとコミカルな感じで客に持っていく。
「へぇー、やっぱ仕事になると顔が変わるわね。男ってカンジ」
「何だァ朱雀、俺に惚れると香織が黙ってないぞー?」
「死ね死ね」
そこに亞花里が割って入った。
「おっと、お喋りはそこまでね。お客さんよ」
入り口を見ると、小さな女の子が立っていた。十二、三歳程度だろうか。
満人が歩み寄って少しかがみ、優しい笑みで言う。
「お嬢ちゃん、どんな御用かな?」
「あの、ここのお豆がとても美味しいと叔父が言っていたので……」
「ああ、お使いかな?」
「いえ、あの……」
「そうか、贈り物だね?」
「は、はい、一番安いお豆でいいので……」
聞いて、亞花里が泣き出す。
「かーっ!聞いたかい朱雀!今時こんな健気な子がいるのねえ!もうお代なんかいらないわよ持ってけドロボーっ!」
「これって小さい子がなけなしのお小遣いを使って贈るのに意味があるんじゃないの?」
「一番安い豆でいいんだね?」
満人がコーヒー豆を陳列してある棚に行って、ふと気づく。
「あれ、一番安い豆切れてるな」
「売り切れですか?店長、私が持ってきましょうか」
「ああいいよ、裏に置いてあるからすぐだ。莉子ちゃんはフロアにいて」
「はい」
満人が裏に去ると、亞花里が女の子の後ろからひょこっと顔を出したさらに小さな男の子に気づいた。
「ん?弟クンかな?」
「え?」
間髪入れず、男の子は女の子のスカートをぐいっと上げた。
「おねーちゃん、しましまだね」
「きゃあああああぁ!?」



男の子の母親が女の子に謝りまくり、女の子の方もペコペコして何事もなくその事件は終わった。
が。
「まあ、何もなくして終わったのは全然いいんだが……なぜその事件の真っ直中に責任者であるこの俺を呼ばんのだ!」
「パンツ見ようとするからでしょ」
「バレちゃった」
「さ、最低……大人としてというより人間として最低ですよアンタ」
満人が残念そうに憤慨したりしまったという表情で口を抑えたりしている。
「店長である俺に最低とはなんだ!ここは俺の城だ!これからはアレキサンダー大王と呼べ!」
何やら意味の判らないことを言っている。
「大王レジお願いしまーす」
「はーい♪」
「大王弱っ!」



そんなこんなで閉店時間。バイトに入っていた四人は椅子に座って脱力していた。
「なかなかハードなバイトだったわね」
「今日は特別混んでましたね」
「そうですねー」
「明日からウチはもうホントに修羅場だわ……」
だべっていると、満人がコーヒーとミルクと砂糖をプレートに乗せてやってきた。
「お疲れさーん、助かったよ。ほら、特製ブレンドコーヒーに朱雀と亞花里はバイト代だ」
「お、ありがと」
「どーもー」
「ありがとうございます店長」
「頂きます」
女の子四人に満人が加わり、しばらくお話をしていた。



「オッケー。今日はホントにありがとな、朱雀、亞花里。美奈子ちゃんと莉子ちゃんはこれからも宜しく」
「はーい」
四人を帰し、空いたカップを洗い終わって一人タバコを吸う満人。
すると、エアーズの扉を開いて誰か入ってきた。
「満人」
「おお、香織。よく来たな」
「今日は亞花里が世話になったね」
「いや、助かったよ。帰ったらもっかいお礼言っといてくれ」
「ん」
香織は満人の目の前に腰掛けた。
「楽しい?」
「勿論だ。やりたくて始めた仕事だからな」
「そ」
香織はにっこりと笑った。
「なら、よし」
「うん」
「その、満人……」
「ん?」
タバコを吸い終わって一息ついた満人の頬に、香織は恥ずかしそうにキスをした。
「待ってるから、ね」
香織の意図していることが判った満人は照れくさそうに頭をかき、にこりと笑った。
「もうちょっと金が貯まったらな」




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