続々・LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜それぞれの望み〜
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青空の集会場から式神を使って竜二と霊獣の捜索をしていた心葉に合流、気を失っている乃亜を任せて再び科奈理は外に出た。心葉は乃亜の頬を優しく撫でて呼びかける。
「乃亜……」
「ん……んん」
「乃亜?気がついたかい?」
乃亜が目を閉じたままむくりと起きあがった。
この時、科奈理と心葉は気づいていなかった。普段乃亜が寝ている時、アンテナのようなアホ毛がピンピンとせわしなく動いているはずなのに、先ほど気を失っていた時は起きている時のように髪が何も動いていなかったことに。
「……?」
乃亜は目を開けた。
「乃亜、目を開けちゃ……」
「……僕の名前は……桐谷乃亜。あなたは?」
「え……?」
様子がおかしい。
「僕の名前は桐谷乃亜。あなたの名前は?」
「……心葉だよ。咲野心葉。覚えて……いないのかい?」
「僕は……僕の名前は……桐谷乃亜」
「ああ。判ってる。僕は君を知っている」
「ここはどこ?」
「君の知らない所」
「何で僕はここにいるの?」
「気を失っていたんだよ。君の恩師が連れてきてくれたんだ」
「僕の恩師って、誰?」
「井良科奈理という名前の巫女さんだ。君の眼に力を宿した張本人」
「眼?」
「とりあえず、閉じていた方がいい」
「うん」
乃亜は言われたとおりに両目を閉じた。だが違和感があるらしく、少し顔をしかめた。
「どうしたの?」
「眼に……何かいる」
「すぐに慣れるさ」
「そう……」



竜二の捜索を開始した科奈理の携帯が、電話の着信を振動により伝えた。
「心葉君……」
何かあったのかと訝しみながら通話を開始する。
「もしもし」
『先生、帰ってきて下さい。圭を呼んであります』
「どうしたの?」
『乃亜の記憶がありません』
「……無理もないわね。判った、戻るわ」
まださほど離れていなかったので、徒歩で青空の集会場に向かう。程なく目的地に到着した。
「あ、先生」
「乃亜ちゃんが記憶喪失ですって?」
科奈理は椅子に座っている乃亜に歩み寄って、顔を見た。
「僕の名前は桐谷乃亜。あなたの名前は?」
「ごめんなさい、私は名乗れないの」
科奈理は霊能者相手には自分から本名を名乗ったりはしない。心葉のような相手だと言霊を支配されると非常に厄介だからだ。科奈理は心葉に目配せする。
「乃亜、この人が井良科奈理さんだよ」
「あなたが、僕の恩師?」
「ええ」
「そう」
科奈理がまるで小さい子と接するように乃亜と話していると、圭が青空の集会場にやってきた。
「乃亜の記憶がねェって?」
「そうなんだ。何とかならないかな」
「俺よりお前の方が専門だろ?」
「僕じゃ無理だ。知恵を貸してほしい」
「知恵、ね」
言って、圭は科奈理を見る。
「婆さん、笑華の時みてェに念とやらで無理矢理記憶を戻すってのは無理なのか?」
科奈理は首を横に振った。
「笑華の時は記憶を自分の奥に閉じこめてたの。私はそれを引っ張りだしただけ。今回は引っ張り出す記憶そのものが失われてるから……」
科奈理にも手が打てないとなると、いよいよもって圭の出番ではなくなる。圭にできるのは読心と催眠だけな上、どちらも技術的には心葉以下だ。
だが、乃亜との交流が深い心葉と科奈理には冷静な判断がしづらい。圭ならば第三者の視点から的確な判断を下せる。心葉がそう判断した時点で心葉の判断力もなかなかのものではあるが。
「鈴だ。鈴なら何とかできるかも知れねェ」
「連絡してみよう」
心葉が携帯で鈴に連絡をつける。相手が出る前に圭は心葉から携帯を受け取った。
『もしもし』
「何だ健か。鈴はいるか?」
『いる』
健はあくまで淡々と話す。心葉の携帯で圭が話していることについては何も訊こうとしなかった。
『あの、何かあったんですか?』
鈴が代わって出た。
「今どこにいる?」
『イタリアです』
「細かい場所は?」
『え……ヴェネツィアですが』
「そうだな……サン・マルコ広場で待っててくれ。すぐ行く。五分だ」
『へ?』
圭は一方的に通話を切った。
「行ってくる。判りやすい場所に居てくれて助かったよ」
「便利な能力だね……」



圭は縮地を繰り返して宣言通り五分足らずでイタリアに着いた。ヴェネツィアのサン・マルコ広場で健、鈴と合流する。
「ほ、本当に五分で……。イタリアにいたんですか?」
「日本だ。俺の力知ってるだろ。すぐに一緒に来てくれ。お前らも仕事あるんだろ?」
「今から帰るところだった」
「……そうか。まぁいい、行くぞ」
圭は二人と共に瞬間移動を繰り返して日本へ向かった。
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