続々・LIGHT JOKER

□LIGHT JOKER〜パラレルワールド〜
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「貴明はどうだ?」
「変わらないよ。私が男になっちゃったっていうのもちゃんと認識してるみたい」
「何か判るか?」
『……詳細不明。謝罪する』
「いや別に謝る必要はないけどな」
結局、大した結論も出せずに学校に着き、げた箱で別れる。
圭子が教室に入ると、クラスメート達がだべっていた。誰も男女反転などしていない。
自分の席に鞄を置き、どっかりと椅子に座る。いつもの癖で大股開きながら座っているので、かなり際どい。男子の視線が実に気持ち悪い。
「……はあぁ〜……」
朝からこれでは、帰る頃には死ぬほど疲れているに違いない。憂鬱だ。
「どうしたの、圭子ちゃん。ため息なんかついて」
「……麗音……は、まんまだな……」
「?」
「こっちの話だ……。土原と話がしたいんだが」
「健気と?」
『いいですよ。では人気のない屋上へ昼休みにでも』
「悪いな」
『いえ』
麗音は頭にクエスチョンを浮かべている。圭子が「光」に話があるなど珍しいことだ。



昼休み。麗音は教室に置いてきて、健気と圭子だけが屋上にいた。すぐに笑華……もとい、笑男も来る。
圭子は持参した修作の昼食を広げ、もぐもぐ食べ始めた。
『話というのは?貴女が僕に話があるなんて余程のことでしょう』
「まぁ待てよ。笑……男、も来るから」
圭子が弁当を半分食べ終わった頃、笑男が屋上に来た。授業中に時空転移でメモを笑男の席に飛ばしておいたのだ。「闇」が問題ないように、圭子も能力は問題なく使えるようである。
「健気君じゃないですか」
『どうも』
麗音に対する対応と違い、笑男も笑華も健気には友好的である。
『彼も何か問題が?』
「まあな。実は……」



『そうですか……。何というか、凄い話ですね。まあ、僕みたいな存在や吸血鬼までいるんですから、何があっても驚きはしませんが』
「何とか元に戻りたい。根本から性別を変えて、世界がそれをそういうモンと認識させたりでき……ねェよな」
『残念ながら……』
『……そこまでのことを考えていたのか』
「さすがに世界を巻き込むわけにはいきませんね……。ん?世界?」
笑男が何かに気付き、顎に手を当て考え込む。
「どうした?」
「……そう、世界……世界なんだよ、圭!」
「はぁ?」
「私達は何らかのきっかけで別の世界に迷い込んでしまったの。おそらく、魂だけ。で、この世界での私と圭は元々の私達の世界とはたまたま性別が違った」
『並列世界……ですか』
「そういうことです。この世界に最初からいた私と圭の魂はどうなったか判らないですけど……」
「待て待て。話がぶっとんでるぞ。電波かオイ」
「真面目な話だよ」
「世界がいくつもあるってのか?」
「勿論。人は世界があって初めて存在できて、世界は人が在って初めて存在できる。つまり、世界は人の数だけ存在するの」
「何が『つまり』なのか全く判んねェぞ……」
「例えば、」
「いや、いい。長くなりそうだからな……とにかく、世界がいくつもあるってことが判ればいいんだろ?」
「そう。それぞれの世界は、同じようで全く違う。それこそこの世界のように、ある人物の性別が違うなんてこともあるし、ゾウリムシが文明を築いている世界も在るかもしれない」
「ヤな世界だな」
「私達が元々いた世界も別々なのかも知れない。違う世界から偶然この世界に飛ばされたっていう可能性があるってことだね。要するに、私は圭の世界の私じゃないかも知れない。圭も、私の世界の圭じゃないかも知れない」
難しい話だ。理解に苦しむが、納得はできそうな理論である。
『では、この僕達のいる世界はあなた方から見ればパラレルワールドということになりますね』
『それが判ったところで、何か手だてはあるのか』
「ありません。が、私達がここに来るきっかけが必ずあるはずです。原因を取り除けば帰れるはず……原因を追求することは、結果的に目的を達成することに繋がるんだよ、圭?」
先ほど原因はどうでもいいと言っていた圭子に向けて人差し指を立てた。
「……はいはい」
圭子は頷くしかない。
「ところで」
『はい?』
「いや、せっかくの面白ェ機会だから訊いてみようと思ってさ。俺達の世界とは違うとこが色々あるかも知れねェ」
「圭っ。遊びじゃないんだよ?」
「焦ってもしょうがねェだろ?」
「ま、まあ……それはそうだけど」
「ってことで、土原。『輪』と『道』の戦争は経験したか?」
『ええ、まあ……』
「どんな結末だった?」
『天上刀刃が、死にました』
「「!」」
結末が違う。少なくとも圭子と笑男の世界では刀刃は生きている。それを表情から察した「光」は、悲しそうに笑った。
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