二つの虹
□二つの虹外伝 今年最後のおつかい
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二つの虹外伝 今年最後のおつかい
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「てことで、ルト、よろしくね。」
十代中頃の、長い銀髪を三つ編みにした少年、ルトは、目の前に突き出された茶色の手さげ袋を見た。
正方形で、大きめの袋。水色の花の刺繍がしてあった。
ルトの目の前に立って、その袋を差し出しているのはルトと同じ年ほどの少女、リコット・アルクィン。
背中の真ん中ぐらいまでの真っ直ぐにのばされた金髪を、一つに結んでいる。
ピンク色のセーターに、茶色のロングスカートをはき、上に白いエプロンを着ていた。
「さっき言ったように、私はここの大掃除しないといけないし、サピエル師匠はその手伝い。
ピアさんはお店の片付け、ファベルはなんだか知らないけどいない。…てことで、おつかいよろしく!食材買って来て!」
「・・・」
ルトが黙って手さげ袋を受け取る。
ルトはしばらくその手さげ袋を見ると、目の前に立つリコットの顔をチラッと見た。
「?なに?」
リコットが怪訝そうに聞く。
「…あのさあ……いや、ま、いいか。ところで、その、買う物は何?」
「ん?ああ、そうね。結構あるんだけど…あいつならこれくらいなら覚えていけるってサピエル師匠が言ってたから、直接言うわね。信用するわよ?」
「うん。了解。どうぞ。」
リコットが軽く息を吸い、
「シャンパン二本と、ティアナジュース二本と、トマト三個と、レタス一個、ソーセージ。
あと、クラッカーと、鶏肉と、卵を二パックと、塩と、それから砂糖と、生クリーム、苺二パック、あ、あと、ブロッコリーね。
レモンも一個、お願い。ハイこれ、お金よ。」
「・・・」
「どうしたの?」
「冷蔵庫に無いのか…それ?」
「買いに行くの面倒くさかったみたい。で、今年最後の日にまとめ買い。でもルトだったら、大丈夫なんでしょ?」
リコットがなんともいえない表情で黙っているルトに聞いた。ルトはいや別に、と顔をそらすと、
「嫌がらせに近いな……」
と、リコットに聞こえないように呟いた。