雨乞い
□手を繋いで、裸足で走って
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どこまでも、俺達はずっと一緒だ。
なぁ、そうだろう?
手を繋いで、裸足で走って
「新八ィ〜何となく散歩行きたいから行かねェ?」
「何となくって何スか。そんな暇があるなら宣伝してきてくださいよ。」
軽くスルー。
此れがいつものやりとり。
いつもって所が少し切ないこの頃だけどそれは今は置いといて。
「だってよォ、そんなすぐに客が来ると思うか?来ないって、絶対。」
「此処で寝て過ごすよりはマシでしょーが。ホラ、早く行ってきて下さい?日が暮れちゃいますよ。」
「よし、解った。新八テメーも付いて来い。」
「嘘付けェェェェ!!!解ったような顔して何にもわかってないよこの人!!僕行く必要無いでしょうが!」
ちょっとした攻防。
ああ、こうしている間にも時間は過ぎていく。
僕は項垂れたように肩を落とした。
その肩に銀さんの腕が乗っかる。
はっきり言って、重いから下ろして欲しいんですけど。
迷惑そうな顔をして視線を送ったけれど、銀さんには通じてないみたいで結構イラついた。
きっと、銀さんは僕が行くと言うまでこうしているつもりだろう。
それでは余りにも埒が明かないので、仕方なくOKを出した。
「マジでか!!サンキュー新八ィ!!」
そう言って僕に笑い掛ける銀さんを見てると、何か許してしまいそうになる。
そんな僕自身に気づいて、苦笑した。
僕も相当毒されているな、と。
「それじゃあ、行くか。」
「はぁ・・・、仕方ないですね。」
僕と銀さんは万事屋を後にした。
―――----・・・・
今日は休日の所為もあってか、街を歩く人が何時もより多い。
天気も良く、お出かけ日和だ。
そんな日にはこれ見よがしとデートをするカップルも大勢見かけた。
「祭りも何も無いのに賑やかでさァ、ねェ土方さん。」
「あ?そーだな・・って、オイ、何だ其れは?」
さっきまで手元に無かったはずの白い物体が手に握られている。
土方はいつもの経験からして何かよからぬ事を企んでいるのではないかと考えた。
普段からあんな仕打ちを受ければ、そう考えるのがごく普通で当たり前の事なのだろう。
そんな土方の心中を察したのか、総悟は意地悪な笑みを浮かべてこう言った。
「気になりやすか?」
「どっちかと言うと秘密にしといてもらった方が俺的にありがたいがな。」
「なんでィ、ホントは気になる癖にやせ我慢なんてしちまって。」
「するか!!テメーはいい加減しつこいぞ総悟!」
此処まで来ると黙っていられない土方に、挑発を続けるサディスティック星の皇子こと沖田総悟はいよいよ手に持った白い物体を使う事になる。
それが土方にどんな災難が降りかかろうとしているのか、見ものといえば否定は出来ない。
フッ と不敵の笑みで土方に注意をひかせ、作戦は行動へと移された。
素早い手の動きとともに、掛け声をかけた。
「くらえィ、土方ァァァ!!」
えいっ
「は?」
向けられたのは、ペンギンお化けのようなぬいぐるみ。
ぶしゃァァァ!!!
何かがぬいぐるみの口から噴射される。
顔の目の前に差し出され、身動きが取れない所を襲撃された。
「うぉばっ!!!」
べちゃ、びちゃっ。
地面に零れ落ちた。
やがて其れは染みになるがすぐには消えていかない。
何故なら顔にかかったのがマヨネーズだったのだから。
きっとマヨネーズ一本差し出されただけなら、まだ喜んでいたはずだ。
でも其れをしないのが将来副長になる男の手口なのだ。
少し静けさを取り戻したその空間は次第に重圧されていく。
土方の怒りのオーラだった。
「・・・そ〜ぐぅお〜っ!!」
「はィ?土方さん。」
地に這うような声で呼ばれても平然としているなんて、一体どんな神経をしているのか。
総悟はにこやかに返事を返した。
「テメェ・・・、」
腰の辺りで拳をつくると、振りかぶった。
ブンッ ――---・・・
パシィッ!!
勢い良く向かった拳の先は目標に届かず、誰かに阻止された。
「っテメーは!!」
ふわり、キラキラと光る髪を靡かせ、挨拶するように笑って見せたその人物は・・・・
「万事屋っ!」「旦那ァ。」