雨乞い

□キューピーブルース
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「今日は、アンタの誕生日だろィ。」






呟いた言葉は、何処かの風に浚われた。












「…5月、5日?」
「どうしたアルカ、そんなムンクみたいな顔して。」
「いや、全然意味わかんないから。何でムンク?」
「じゃ、チャッキーで。」
「アンタも悪乗りしない!つか、今日何かあったんですか?…もしかして仕事の依頼?!」
「メガネ五月蝿い。大声出すなヨ、そんな事しても存在感は変わらないネ。不毛アル。」
「僕なんでこんなに責められてんの?もういいよ。もう何も言いませんからァァァ」
「メガネェェェェ、お前もう黙ってくれ!思い出せないから!それから神楽、お前は口を慎め。女の子がそんな事言ってたらモテねーぞ。」
「モテない銀ちゃんに言われても説得力無いアル。」
「だァァァァ!!もうてめーらどっか行ってくれ!」


怒鳴り散らされて拗ねる二人を余所に、忘れかけた予定を必死に思い出そうとするが、なかなか思い出せない。
それがとてもじれったくて、何度か呻ってみせる。
効果はこれっぽっちも表れる事も無く終わる。
そこで、なにをしても無意味だと言う事にやっと気付くと、一人になった居間のソファに寝転んだ。


「何かあった気がしたんだけど…何だっけ?」

そう言って窓の方を見ると、黒猫が一匹通り過ぎていくのを横目で流した。







「あ。」





何を思ったのか。
思い出したように言葉を漏らすと、こうしてはいられないと一目散に万事屋を出て行った。


頭の中は、あの男に会うことでいっぱいになっていた。





















まずは一言、言わせてほしい。
誕生日おめでとう、只それだけ。
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