雨乞い
□キューピーブルース
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「旦那を追いな、早く。」
「言われなくても、分かってるさ。」
部屋を飛び出し、廊下に出た瞬間。
「総悟」
「なんでィ、早く行けよ。」
「…ありがとうな。」
「はっ、何を言い出すんだアンタは。」
「いいだろ、偶には。」
それだけ言うと、急いで駆けていった。
取り残された総悟はというと、その場座り込み、寝転んで思うのであった。
これからの、結末を、展開を。
出て行ってから時間はそう経ってもいない筈なのに、あの銀色の姿が見当たらない。
何処に行ったものかと思考を巡らせていると、何処からか歌声が聞こえてくる。
それが聞こえてくる方へと進んだ。
♪ハッピバースデートゥーユー
ハッピバースデートゥーユー
ハッピバースデーディア…土方
ハッピバースデートゥーユー♪
「…銀時。」
聞きなれたその声は、一人淋しく奏でていた。
俺に対する、祝いの歌を。
「多串君…」
「土方だバカヤロー」
なんで、なんて野暮な事は聞けなかった。
俺自ら追い出して、話を聞かなかったのだから。
しかも、こんな日に。
「さっきは、悪かった。」
「…別に気にしてねェからいいよ、俺も邪魔して悪かったな。」
「いや、違ェんだよ。ちょっと今日は虫の居所も悪くて…、」
「…ふーん。」
「…ああ」
少し、ほんの少し。
気まずかった。
それは否定できずに、沈黙が訪れようとしていた。
「なァ、」
意外にも、それを破ったのは自分だったのだけれど。
「何。」
「その…、アレだ。」
「………?」
なかなか言い出せない自分に、イラつきを覚える。
こんな時に何もいえなくなるのが自分の悪い癖だと分かってはいるけれど…
自問自答をした所でどうなる訳でもなく、結局上手くまとまらないまま口走る。
「これから、何処か行かねェか?」
「え?」
少し驚いたように返事を返される。
どうしたらいいか、自分でもいまいちよく分からなかった。
けど、このままこの場所に留まっていても仕方ない。
結局次の言葉も、よく考えず言い放ち、動き出してしまうのだけど。
「いいから来い、ほら」
「えっ…て、…わわっ」
手を掴むと、少し早歩き。
目的地は…誰も居ない何処か。
そこでありがとうを。
そこでおめでとうを。
もう一度、言えればいい
それ以外は、もう望まないから。
ハッピーバースデー俺。
ハッピーバースデー土方。
今日この日、二人のキューピーブルースは鳴り響く。