les fatras

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一月:黒凪


Let it be.
 なるようになる。<1/3>





 「准ちゃん、助けて!」
 いつものように学校に着いて、教室のロッカーに鞄を仕舞おうとしていたら、いきなり声を掛けられた。
 「おー、おはよー」
 私の目の前の涙目の子は一希。小学校にいた時から仲良くしてる子。でもって、私は彼女の押しには滅法弱い。
 「ど、どうしよ……困ったの」
 ちょっとどころじゃないでしょ、なんて突っ込みながらも。私は、
 「どうしたの?」
 妹に対してのように、思わず頭を撫でて宥めようとしたけれど、彼女の口から出てきた言葉には流石に呆然としてしまった。
 「告白されちゃった……どうしよう」
 「え? へ? も、もももう一回」
 二度目だからか、顔を真っ赤にして、上ずった声で答えてくれた。
 「大石君に、告白されたの」
 「どうすんの? それより私その人知らないんだけど、どんな人?」
 他人の恋愛事情程聞いていて面白いものはないと思う。ちょっとどころか、大分興味が湧いてきた。
 「バスケ部の部長さん。保健委員会で一緒に代表やってるけど……あんまし話したことない、かな」
 「いかにももてそうな筋書きじゃないですか、その少年」
 いかにもな人間像がこれまた面白い。一希も可愛いから一目惚れかしら。
 「えええ……どうしよう! 私どうしよー」
 一希はそういうことに慣れていないのだろう。切迫した表情で私に迫ってくる。そこで私は大事なことに気がついた。
 「一希はさ、大石君のこと、どう想ってるの?」
 私の素朴な質問に、彼女はぱっと顔を伏せた。気になって覗き込んでみた。
 「分からないの。でもね、あのねっ」

 「はよー」

 一希が何か言いかけた時に、私達の背後から男子の声がした。一希は小動物のようにびくりと反応した。
 「あ、あっ、お、おは、おはよう、小林君」
 動揺しまくりの一希に小林朔哉は楽しそうに笑った。
 「准、どうしちゃったの遠藤さん」
 「女の子はね、いろいろあんのよ、朔哉」
 私のいろんな意味を込めた言葉に一希は「何でもないのっ」を連発して叫び、私は勿論教室にいたメンバーに笑われた。
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