短編2
□恋せよ乙女〜下〜
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早朝、泊まっていた宿を出て火影邸へと向かう。
まだ寒さが残る朝は、今日起こるであろう出来事に対する前触れかのように私の肌に寒気が走る。
昨日の出来事は嘘ではないのだと思い出し小さく溜め息を吐いた。
多由也の事とシカマルの事が頭を何回も悩ませる。なんて勝手な奴等なんだと思った。
多由也は昨日しつこいくらいに私に質問だけをして、あっさりと礼をして消えていったし。シカマルはシカマルであんな接吻をするなんて…
しかも今日、ゲームをしようと言い出した。
「…どうすればいいんだ。」
今日はバレンタインデーだ。木の葉の女たちが、朝から木の葉の商店街に溢れ返っていた。
ルールは簡単。
今日1日シカマルに見つからなかったらいいだけ。此れだけの人の数だ。人1人見付けるのはとても困難だ。
兎に角、今日1日彼奴が居そうな場所、彼奴が来れないような場所に隠れておけばいい。
何故私がこんな事までして彼奴を避けなくてはいけないんだ!
「…火影邸に行こう。」
右手に昨日買ったチョコレートを持ち、彼奴に見つからないよう気配を察知しながら足を進める。
シカマルは会わない間に"男"になっていた。
昨日もそうだった。
体を押し返してもビクともしなかったシカマルの胸板は、かなりの筋肉が付いていた。
私の体を撫でたシカマルの大きな手は、とてもゴツゴツしていて振りほどけれなかった。
それにあの唇が…
「!?」
自然と指が自分の唇を撫でていたことと、昨日のことを思い出し、顔が熱くなった。
なんなんだ!
彼奴は私に何をしたというんだ!
只の接吻じゃないか!
頭の中で何回も否定はするが、直ぐには消えてくれない。
消したくても消せない。
もどかしい思いに苛々が頂点に達していた時、いきなり後ろから肩を叩かれた。
誰だと思いに振り返ると、昨日会ったくノ一たちが嬉しそうな顔をして立っていた。
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