8月の雨
――8月の雨は、自己満足の偶像と。
祭りばやしを遠くに聞いた。
「足、痛くないか?」
「大丈夫です…。」
神社の境内。佇む2人。
さすがに裏手は静かなもので、
月明りのぼんやりとした視界の中、
浴衣の裾から覗く白い脚だけが際立って見える。
「あの…すいません、高梨さん。せっかくのお祭りなのに…。」
「……いや。」
俺は黙って、下駄の鼻緒を直しにかかる。
「高梨さん…。」
名前を呼ばれ見上げれば、
星空の下、瞳を潤ませて俺を見る中谷。
「やっぱり…私じゃ、ダメですか…?」
祭りばやしが遠くに聞こえる……。