捧げ物

□思い出は苦い味?
1ページ/4ページ

――毎日毎日飽きないなコイツらは――

「水月!お前さ〜いい加減にしろよ!」

「そういう香隣はどうなのさ?」

「……二人ともまたか……」

 夜明けを告げる鳥のさえずりを気散らすような二人の目覚まし時計代わりの喧嘩。サスケはこの連中と旅をする事を些か悔んでいた。

――どうも体調がイマイチだな。この連中をまとめるのに気を使っていたせいか、自分の体の変調に気付かなんだ――

「あ?サスケ?なんかお前顔赤いぞ」

「本当だ!どうしたの?熱がでたかな?」

 素早く水月が近寄り、サスケのオデコに手を当てた。その水月より更にサスケに近寄る香隣はサスケの瞳の澄み具合いを見た。これでは重吾の出る幕がまるで無い。

「「寝てなきゃ駄目だ!!」」

 言うや否や二人でサスケを布団に押し倒し、天井に届きそうなくらいの布団をサスケに掛けた。

「これはまるで布団の牢獄だな」

 呆れながら見上げる重吾にサスケは

「重吾……代わるか?」

「いや結構。休むんだなサスケ」

 やれやれと横になりため息をつくサスケの両サイドから

「サスケ!喉渇かないか?白湯を持ってこようか?」
「サスケ!何か食うか?食べて早く良くなってもらわないと困るんだよ!」

――全く……騒々しい奴らだ――

 サラウンド効果のような二人の声に苛立つが、サスケは以前にもこんな事があったなと思い出していた。





「サスケ!風邪ひいたんだって?」

「サスケ君、大丈夫?」

 部屋に入ってくるなりナルトとサクラはベッドで寝ていたサスケの元へと駆け付けた。

「あぁ……ちょっと熱が出た。寝ていれば治る」

「なぁ、俺達に出来る事何かねぇかってば」

「そうよ、サスケ君何でも言ってよ」

 じゃあ静かに部屋から出ていってくれと言いたいサスケだったが、ナルト達の表情を見て止めた。

――何だよコイツら……あんまり心配そうな顔すんなよ――

 いつだって独りだった。

 朝起きてもおはようを言う相手はいない。

 ご飯を食べる時にいただきますを言う相手はいない。

 夜に布団に入る時におやすみを言う相手はいない。

 どんな時も独りだった……

 だけど今は……

「ねぇ、サスケ君何か食べたい物ない?」

「林檎剥くか?あ、アイスがいいかな?それともイオン飲料水がいいか?」
 じっと天井を見つめていたサスケが、恥ずかしそうにボソッと喋った。

「………粥……」

「へ?なに粥だってばよ」

「鮭…のお粥……いやっ!やっぱ!!……」

 言った途端慌てて取り消そうと言葉を発するが、既にナルト達は玄関から飛び出していた。

――うわ〜俺、なんで奴らに甘えてしまったんだ?ったく、みっともねぇ――

 赤い顔を更に赤らめたサスケは布団を頭からかぶってしまった。

――鮭のお粥……昔母さんが作ってくれたっけな――

 熱が上がってきたのか、だるさと眠気でサスケは眠ってしまった。
 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ