拍手SS

□甘い時間
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「私の返事が知りたい?だったら店に来れば分かるわよ」

 その言葉を聞いたのは三年前。その意味を知りたい俺は……





「カカシ、S級の長期任務だ。3マンセルで隊長はお前だ。明日から頼む」

 事も無げに火影は俺に言い放つ。またか…

「了解です」

 いつもの事なので俺もアッサリ引き受けた。

「内容はこの書類を読むように。後でメンバーとのミーティングをしろ。それと、分かっているとは思うが…」

「は〜い。ちゃんと身辺は綺麗にしておきます♪」

 おどけて答える俺に、火影は重たそうな胸を揺らす様に笑い、気をつけて行けよと言った。

 そう…S級の長期任務となるといつ帰るか、もしかすると生きて帰れるのは難しい内容の仕事だ。だからこそ厄介な関係は絶たなければならない。



「悪いけどサ、俺と別れてよ。いつ帰るか分かんない仕事入っちゃったから」

 この別れ話を切り出すと、大体の女は泣き出し嫌だ嫌だ別れないだの帰るまで待ってるだの言うけれど、いざ任務に赴き極秘で様子を見に来れば、浮気相手と暮らしていたり木の葉の里から消えていたりと、散々な思いをしたよ。

 まぁ若気の至りって事で色々勉強になったけどさ。今付き合ってる娘も例外なく別れるつもりで話した。

「随分身勝手な別れ話なのね。まぁ職業柄仕方ないとは思うけど。でもね、ハイそうですか、さようならって言って欲しい?」

「仕事理解してくれてどうも♪だったら別れてくれるでショ?言ってくれないと俺困るの」

 ズキンと胸が痛むのを気付かれないように、平気な顔した俺が居る。

「そうね……返事が聞きたいのなら任務が終わってから店に来てみて。来れば分かるから。じゃサヨナラ」

 なんとも意味深げな言葉を残し、彼女は俺の前から去った。

 結局曖昧な別れをしたまま俺は任務に就いた。何度か里に帰る機会もあったけど、また裏切られるかも知れないと思うと足を向ける気にはならなかった……

 三年の月日が流れ、無事に任務を遂行し帰還した。

 彼女の言葉が気になり、つい彼女の働く店の前に。

「来ちゃったけど、さてどうするか…」

 彼女は『木の葉』とゆう洋菓子専門の店でパティシエとして働いている。以前ナルトのバースディケーキを購入する為にその店に入ったけど、ケーキと一緒に彼女もゲット。

 付き合ってみればやたらと口より先に手が出るタイプで、よく殴られたなぁ〜

「やっぱ三年経つから中を少し改装してるな。ん?」

 懐かしく店の中を伺っていていたらショーケースの中の一つのケーキが目に止まった。

「あのケーキは…」

 胸の鼓動が早くなり、彼女の言葉の意味を確かめたくてつい店のドアを開けた……



「これは……」



 それはまるで、宝石のように並べてられるケーキ達の存在を脅かすように中央に鎮座していた。たった一個の小さいホールのガトーショコラケーキ。そのケーキのポップには



“はたけカカシ様御予約品”



 そうなんだ、甘い物があまり好きでない俺に彼女が唯一作ってくれるケーキ……

 あぁ…そうか…これが君の返事なんだね。

「いらっしゃいませ。お決まりですか?」

 顔を上げると、三年振りに見るパティシエ姿の彼女が立っていた。

「このケーキ…買ってもいい?」

「ハイ、御予約の品ですね。お待ちしておりました」

 毎日彼女は焼いてくれてたのだろうか…俺の為に。ずっと俺の帰りを信じて…

 手際良く箱詰めし、彼女はにこやかに俺に手渡した。

「一体何百回焼かせたと思うのよ。後でゆっくり話を聞くわね」

 などと笑いながら凄く怖い事を言うから、ある意味火影よりも恐れる存在の君。

「じゃあ店が終わったら君をお持ち帰りできるんだね♪」

「このケーキ同様、そんなに甘くないわよ」

 俺も君も自然と顔がほころぶ。長かった三年の月日のわだかまりは、甘い香りに包まれて、あっという間にパウダーシュガーの様に溶けて流れた。



良かった♪捨てられなくて♪



END


 

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