杜の賑わい
□君が眠るまで
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客人が来た。まぁ客人と言うより大切な友人と言ってもいいだろう。
君はまともに受け付けして来た例しが無い。今日も今日とてノックもせずに、とびきり元気な声でいきなり執務室に入ってきた君は、金糸の柔らかい毛並みと吸い込まれそうな青い瞳の悪戯小僧。
毎回同じ返答とは分かっていても、一応流儀として挨拶と訪問した旨を訪ねるが、
「任務じゃねえってばよ。顔見に来ただけだ」
代わり映えの無い返答に閉口したが、相変わらずの奔放さに羨ましさを感じた事は黙っていよう。
そして始まるうっとうしい程の自己アピール。最近の木の葉の状況や任務の内容等々。おいおい、いくら同盟を結んでいるといっても内部の情報を他里の者、しかも長に話すのはまずいだろうに。
でも君は俺を風影とではなく大事な友人として見ているのであろう。書類を書く俺の真ん前に座り、忍とは思えぬ屈託の無い笑顔と砕けた恰好に、いつか後ろから襲われるかもな、と想像し苦笑いをしながらも相づちを打っていた。
そのうち君は仕事ばかりの俺に顔を上げて欲しいのか、
「もっと自分を見てよ。もっと自分を構ってよ」
と言いたげな拗ねて絡み付くような視線を投げ掛けてくるので、流石に書類を片付ける手を休めて直々にお茶を煎れてやる。
途端にご機嫌復活の満面の笑顔。実はこの笑顔が観たくてワザと焦らしている事は君には内緒だ。
どうやら君は一緒に砂嵐も連れてきたようだね。直に凄まじい風と砂が里を支配し始める。仕方がないので泊まれる様にと客間の寝室を用意させた。
泊まるのは始めてでは無いが、受け付け同様に君は客間の寝室で寝た例しがない。
「だってさ〜あんな広い部屋に広いベッドは落ち着かねぇってばよ!」
だからと言って俺のベッドに潜り込むか?フカフカの毛布からひょいと顔を出し、ニシシと笑う君はまるで金色の仔猫。猫撫で声でも挙げたならば直ぐ様降参だ。
俺のベッドも二人で寝ても余る程に大きいから困る事はないが、君の体温以上に熱くなる自分の心を悟られたくないのでヒヤヒヤなんだ。
「なんかさ、面白い話ある?」
広いベッドの中央に寝る君と、ベッドの脇スレスレに寝ている俺。どっちが客人か分からないね。そんなのお構い無しに俺に聞く君。
じゃあ君に話してあげよう。ある森の動物達のお話を……