杜の賑わい
□PRIDE
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どうして俺は……
貴方の前で
素直に
笑えないんだろう……
俺のちっぽけな
硝子のプライド……
俺が上忍となり、任務でもガイ先生との班以外の忍と組む事も多くなった。
大抵が俺が班長の4マンセルだが、今回も同様だった。ある事を除いて……
「では今回の任務のシミュレーションはこれで終了します。質問は無いですね?」
「はい!日向上忍」
「無いです」
「…………」
「ヒナタ様…失礼ヒナタさんも無いですね」
「あっ!は、はい…無いです。ごめんなさい…」
俺の尖った声に弾かれた様に驚き、うつ向き加減に小さな声で答えるヒナタ様。何故か今回のメンバーに選出されていた。
火影はどうしてこの人を俺のメンバーに加えたのか…意図が分からない。
「では30分後に集合ののち、直ぐに出発します。それまでに身支度を整えて下さい。以上」
今回の任務は火の国と隣接する小さな国内で、ビンゴブックに登録されている、とある隠れ里の抜け忍達を見掛けたとの報告があり、その集団の潜伏先及び情報の収集が目的だ。
「まぁいいさ。いつも通りに振る舞えばいいだけなんだから」
なんて独り言にしては大きな声に出して自分に言い聞かせているけれど、思うのはいつもヒナタ様との関係だ。
宗家と分家、壁と溝。ヒナタ様と俺。変われるものなのか……
貴方の涙、貴方の決意、貴方の笑顔……
俺を鳥籠を開け放ち、縛られた鎖を断ち切ったナルト……そして俺より先に羽ばたいたヒナタ様を、俺は守りたいと思うようになった。
その羽ばたいた空は、雨に打たれ風に揺らされ、飛ぶのも危うい世界なのに、その先に必ず広がっているであろう青空に迷う事なく進む。
皆ヒナタ様は変わっていないと言うが、紅先生や俺は知っている。その変化は僅かであっても、ヒナタ様は……その羽ばたきを停めたりしていない。
けれどたまには羽を休める止まり木が無ければ落ちてしまう。俺はヒナタ様の止まり木になれれば……
そうは思うのに、態度がいつも硬いからヒナタ様は俺の前で笑ってはくれない。貴方の笑顔を作る止まり木になりたいと願う俺がこんなんじゃ………
下らないプライドが邪魔をするんだろうか……
いつになったら俺は貴方の前で大人の振る舞いができるのか……
定刻通りに俺達の班は出発し、隣国に入る手前で一般人の装いに着替え、報告のあった街へと繰り出す。
俺と、中忍歴の長い忍は潜伏先を確定する為に、一緒に行動。新米の中忍はヒナタ様と共に街中で情報収集に回ってもらう事にした。
数時間後に俺達は街に戻った。既にアジトはもぬけのカラになっていて、足取りが掴めない。しかし、ついさっきまで生活をしていた形跡があるので、そう遠くまで逃れていない筈。ここは一旦里に戻り暗部の要請もしなければ……
「しかし…ヒナタ様は何処へ」
新米の中忍は直ぐに見付かったがヒナタ様は見当たらない。
こんな事で使いたくは無かったが時間を無駄にしないために《白眼》で探すと……
「居た。全くもぅ……」
ヒナタ様の居た場所は装飾品の店だった。