杜へのいざない
□スタンド・バイ・ミー
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茜色の空を西の端に遠ざけて、夜の帳が木の葉の里に静かに降りる。
里は秋の気配に満ち、陽が落ちると同時に気温が下り肌寒さを感じさせた。
「ふぁ〜あ!疲れたってばよ…」
寒さと疲労と空腹で些か投げやりな口調の呟きをするナルト。
今日の7班の任務は火の国内の、里以外の都市の治安情勢の調査であった。
里以外の都市部の治安を把握するのは、自国を国外の侵略や国の内戦などの危機に招かない為でもある。
だが情勢というのは常に変わるもの。不確かな情報よりも先ず自分の目や耳で国の動向を知っておく必要があり、下忍の者達にも必要な任務であった。
カカシのアドバイスもあり調査もスムーズに終え、早めの帰還となったで報告書を提出した後は解散となった。のだが……
「イルカ先生〜頼み逃げはズルイってばよ〜」
ナルトは帰り際にイルカに呼び止められ、書類整理を頼まれた。
父の様に慕うイルカの頼みだし、まだ陽も高かったので安請けあいしてしまったが、元来整理整頓が苦手な身、30分で終わる仕事が2時間もかかってしまった。
しかもイルカは終わると有難うの一言だけで席を立って消えてしまったのだ。
窓の外を見ればすでに夕刻もかなり過ぎた頃。今日という日の終りが近づいてくる。
いつものナルトなら少し拗ねながらも気持ちを持ち直すが、今日は違う。今日は暗い部屋に一人で帰りたくないのだ。
――毎年毎年嫌なんだってばよ〜この日を独りで過ごすのは――
帰る部屋にナルトを待つ者は居ない。
灯りの漏れる部屋に帰れる者にはただいまを言える相手、お帰りと迎えてくれる相手が居る。
自分は物心ついた頃から待つ人の居ない部屋に帰っている。今更何を羨ましく思う訳でもないが…
重い足取りで部屋の近くまで来てベランダを見ても灯りは無く人の気配も無い。
いつもの当たり前の光景なのに今日は胸が痛く感じるのは…
――独りで誕生日祝ったってツマンねぇし…さっさと飯食って風呂入って寝るってばよ――
いつになく重く感じる玄関の戸を開け部屋の明かりを付けようとした時。