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□ジェイド+ネフリー
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夕焼けも沈んで人工的な明かりが微かに灯りだした頃。
家に帰ることなど微塵も考えないで、少しだけ硬くなった雪の上を二人だけで歩いた。


真っ白な視界に兄さんの黒い外套だけが浮かび上がって、それだけを目印にして着いていった。



そこから世界がやってくるような、そこが世界の終焉のような。



迷いもなく歩く兄さんの顔が見えなくて、街から足を踏み出して遠ざかっていくのに振り返ることもなく一定方向へと流れる髪を見つめながら、お家へ帰ろうとは何故か言えなかった。

たぶん、兄さんが家を出る時に私を誘ってくれたからだと思う。


――嬉しかった。

兄さんと会話をしたということが嬉しかった。
兄さんと一緒にいても良いということが嬉しかった。


沢山歩いてとても疲れていた――それでも幼子の歩幅だから思ったよりも歩いてなかったのだろう――時に兄さんが何かを諦めたかのように歩みが遅くなった。

つんのめて兄さんにぶつかりそうになって、何時も感じている兄さんとの距離より、それよりもずっと近くて息を飲んだ。


「まだ、進むのか」


兄さんの微かな声。

その時、何故かそう言った兄さんがとても疲れているようだったので、見えていないだろうに勢い良く首を横に振った。


「ううん、もう行かない」


兄さんは立ち止まって、暗い夜空を見上げながらわかったと言った。





「ネフリー」


そんな事よく覚えていましたねと兄さんの顔が歪んで、私は小さく笑ってしまった。

確かに、覚えているとは思わなかっただろうと思う。
だってそれは私が四歳位の時の話。



「……私はその時、何かの始まりか終わりが欲しかったんですよ」

そのまま進んでいたら確実に二人の命は尽きていたでしょうけどね、と笑う兄さんは本当に掴めない人だと思う。
それと共に、私は彼と少しばかり通じるところがあるから相手は嫌煙したいと思っているのだろう。

でも、今日兄さんは来た。

「その時、確かに始まりはあったのよね、兄さん」

「そうですね」

「調度その日にやってきたネビリム先生に出くわした」

「ええ」

「迎えに来てくれたのだと勘違いされて、皆にも迎えに行ったのだと勘違いされて」

「はい」

兄さんの顔に笑みを浮かべるための筋肉が引き攣ったのを見てとれて、兄さんに言いたかった言葉を伝えるために息を吸った。



「お疲れ様です、兄さん」






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