The World

□†短い話†
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「つくづく自分が馬鹿だって思う」

【…拒絶・・・】

あたしは、特に何も考えてない頭で、そうつぶやいた。
いや、考えてた。
あたしがどのくらい考えナシの馬鹿なのか。

司とマハを追いかけて、たどり着いた先は管理者が探し出すことの出来ないような、ほかのエリアとは違った場所だった。
そこには銀色のフワフワセミロングの髪を揺らしたまま空中浮遊して眠っている小さな女の子がいた。
名前は、わからない。
司も、わかんない、と首を横に振ってた。
マハは、答えてくれそうになかった。
とりあえず、司をつれてこのエリアを出よう、と考えた。
だけど、そう簡単にはいかなかった。
司は猫のように気分屋で、そして何より、彼は何かを恐れていて、それから逃れたいといった感じだった。
だから率直に司に聞いてみた。
「ねぇ、司、何が一体怖いの?」
結果。
あたしはその場所から拒絶されてしまった。
まるで、弾き出されるみたいに。
弾き出された所は、Δサーバーのルートタウン、マク・アヌだった。
司と出会って、あたしがThe Worldから抜け出せなくなった場所。
頼れるべき人を失ったあたしは、ログアウトもできず、ひとり、路地裏のオブジェクト上に座っているしかなかった。
―――たぶん、聞いちゃいけないことだったんだろうな。
そう、今頃になって思い、この手にないコントローラーの感覚をまた探し出した。

「よぉ」
手のひらをグーパーグーパーしているのに集中していたせいで突然声をかけられたときはとっても驚いた。
こんな路地裏でも、PCくるんだ。となんとも失礼なことも思う。
あたしに話しかけたであろうPCは二人。
一人はなんだか暑っ苦しそうなバーバリアンタイプの男剣士。
PC名の表示を見る限り、彼の名前は「ベア」
そして、もう一人は剣士よりもかなり背の差がある少女重剣士。
PC名は「ミミル」
あぁ、この二人、知ってる。

「お前さんをずいぶん探してたよ」
「そう、なの?」
どうして探す必要があるのだろう?
その考えはすぐにベアの次の言葉で解決された。
「アリスがお前を必死になって探してる」
「アリス」
あぁ、この名前も、知ってる。
あたしをThe Worldに誘った友人。
あたしが、約束していた友達。
「司と一緒に消えたって聞いたから、あたしもついてきちゃった。ねぇ、司は?」
ミミルの質問に、あたしは表情をゆがめるしかなかった。
だって、あたしがあんなこと言ったから拒絶されちゃった。
「ごめんなさい、あたし、司を傷つけちゃったかもしれない…」
そんなあたしの表情に何か気付いてくれたのか、ベアは、少し言いにくそうにこう、ウィスパーしてきた。
―――何か、あったのか?
ウィスパーの仕方はログアウトできなくなってからわからなかったから小さく、ベアに見えるようにうなづいた。
―――そうか。何か、彼の情報があったらいつでも教えてくれ。
そして、彼はこうも送ってきた。
―――アリスは、ドゥナ・ロリヤックにいる。
あたしはオブジェクトから飛び降りてレンガ張りの地に足を付けた。
「ひとつ、言える事があるの。」
ミミルとベアは不思議そうにあたしを見た。
これだけは、いっておかなきゃ。そう、あたしは思ったから。
「司と、仲良くしてあげて? 諦めなかったら、まだ、間に合うはずだから」
「あったりまえじゃん!」
ミミルは元気よく答えて笑顔でそう言い放った。
ベアも小さくうなづいてくれた。
「じゃぁ、あたし、いくね」
あたしは二人に手を振って、カオスゲートへと急いだ。
End

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