親世代五年生

□七話
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月曜日になった。特になにもない日曜日、レギュラスに連絡をせずに過ごした後ろめたさから逃げるように大広間から去り、中庭の木の根元に腰を降ろして薬草学の教科書を眺めながら次の授業の開始を待った。
教科書を見ながらぼんやりしていると、ガサガサと草を踏む音が聞こえたので顔だけを動かした。
スネイプが一人でこちらへ歩いて来るのが見えた。
「お前に聞きたいことがある」
教科書を開いたまま、正面からずれたところに立ったスネイプを見上げると、立ったまま質問してきた。
「お前はレギュラスになにをした?」
「いや、なにも」
思い当たる節などない。本当だというのにスネイプは疑惑の眼差しを向けたまま、嘘を見抜こうとじっと見つめてきた。
その眼差しが先生スネイプと被り、一瞬怯んでしまったが気を取り直して聞き返した。
「本当だってば。それに具体的になにしたって思ってるの?」
スネイプはしばらく黙っていたが、おもむろに口を開いた。
「愛の妙薬でも盛ったのか?」
「ブッ!ないないない!なんで愛の妙薬…あり得ないあり得ない」
いくらイケメンで同じシーカーだからって、そんな単純な手は使わないし、なにより愛の妙薬を盛ったなら一日中ラブラブしているはず。
矛盾していることを笑い飛ばすと、つらつらと言葉を連ねた。
「最近、レギュラスがやたらとお前のことについて質問をしてくる。主に授業の様子だ。なぜかと聞くと興味があるの一辺倒で話にならない。服従の呪文の症状はないし、愛の妙薬なら四六時中一緒にいるはずなのでおかしいとは思っていたが…こうなるとますます分からない」
スネイプは腕を組むと、ため息を吐いて視線を泳がせた。
スネイプにもわからないのなら私がわかるわけがない。レギュラスは一体、私のなにを知りたいのだろう。逆に興味が出てきた。
「思い当たることはないのか?」
「思い当たることなら、クィディッチかなぁ…」
「ふむ、なるほど。確かにそれなら…しかしそれなら授業中のお前のことを…」
スネイプは言いかけると、心当たりがあるのか急に押し黙った。非常に気になる。クィディッチ以外の要因があるなら是非とも聞いてみたい。
食い入るように見つめていると、組んでいた腕を解き、腕を下に下ろした。もったいぶるなよ、と思っていると、スネイプは体を素早く横へ動かした。
「ギャアッ?!」
次の瞬間、天と地が逆さまになった。無情にも杖がポケットから落ち、地面に転がったのが見えた。突然の出来事に驚いていると、視界の中に見慣れた四人組の姿が映った。どうやらスネイプに当てるはずだったが避けられ、私に当たってしまったようだ。ふざけんな。
そういえばスネイプが開発したこの身体浮上の呪文がジェームズの世代が五年生の時に流行ったことを思い出しながら、捲れたスカートの裾を絞るために腹筋に力を入れて体を軽く折り曲げ、手を伸ばして下着を隠すとシリウスが喜色を帯びた声で言った。
「黒かー。下着は色気あんなー」
ちくしょうしっかり見られた。中でもお気に入りの黒パンツ。レース可愛かったろ?しかしお前に見せるために買ったわけではない。
ドクドクと頭に血が昇る音を聞きながらシリウスを睨むと、リーマスが戦闘を開始したジェームズとスネイプを見つつ、宙吊りになっている私の下へやってきて心配そうに見上げてきた。
おろおろしている様子から察するに、リーマスは反対呪文を知らないようなので自分で解除するしかない。喉に力を入れながら声を絞り出し、空いている左手を伸ばした。
「杖、取って」
「わかった」
シリウスがニヤついているのを見ないようにして、リーマスから手渡された杖を自分に向けた。
「どいてて。…ラビコーパス」
着地した足が血の流れが変わったために鈍く痛んだ。血が昇り、頭痛がするのでしゃがんだまま顔をしかめているとリーマスが「大丈夫?」と声をかけてくれた。
「うん、大丈夫」
立ち上がってシリウスを睨むと、いつも通りの嫌らしい笑みで嫌らしいことを尋ねてきた。
「それにしてもいい下着だな。今日はそんな日なのか?」
「んなわけあるか」
「じゃねえとそんな洒落たもん着けねえだろ?正直に言えよ。誰だ?」
「彼氏なんていませーん」
「クィディッチの選手か?」
「いないっつーの」
「あ、もしかしてうちの弟か?」
「んなわけない、んなわけない」
「ならお前はなんもねえのに勝負下着着けてんのか?常時臨戦体制ってか?」
もう、どうでもいい。そういうことにしとけ。
シリウスと話してると疲れるので無視してジェームズとスネイプを目で追うと、当然の如く沸いた野次馬の中からスプラウトが巨体を揺らしながら姿を見せた。
「あなたたち、こんなところでなにをしているんですか!やめなさい!」
ストッパーが来てくれた。良かったと胸を撫で下ろしていると、スプラウトはガミガミとジェームズたちを叱ったあと、私たちの所へも来た。
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