親世代五年生

□一話
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通算六回目の新学期。小中高と合わせると、両手じゃ足りない。それもあと二年の辛抱と思いつつ、壇上に立つダンブルドアを見つめた。
ダンブルドアの話が終わると、丸椅子の上に置かれた組み分け帽子が歌い出した。

昔々のその昔、私がまだまだ新しく…

ホグワーツの危機、いや、世界の危機は差し迫っている。結束を堅くせよと歌う帽子を見つめ、去年の今頃は神秘部で戦っていたことを思い出した。
ー強くならなきゃ。死なないように。
陰鬱とした雰囲気に毒されないよう、歌に耳を傾けながら制服の下にある首飾りの形を指でなぞった。
ーみんな、頑張るよ。
また生きて会えるように。
やがて創始者たちの争いを歌う声がやみ、乾いた拍手が響き渡った。手を叩き、前を見つめているとお腹かが鳴り、自己主張した。早くご飯。そう言っている。
その一瞬でご飯のことしか考えなくなってしまった私は、やっと出てきた豪華な食事に我れ先にと手をつけた。
パン、ベーコン、目玉焼き、時々シチュー。夏休みの主な献立はバリエーションが貧困だったので、目の前の食事に非常に食欲をそそられる。
ひたすら食べ続ける私を見ていたエドワードが呆れながら言った。
「がっつき過ぎですよ?」
「お腹空いてお腹空いて…それにこんなに豪華なの久しぶりですもん」
「それにしちゃあ掻き込み過ぎだよ。ほどほどにね」
カルナは半笑いで言うと、パンをかじり、もぐもぐと口を動かした。
カルナにまで言われるとはちょっとショック。少しペースダウンさせると、エドワードが尋ねてきた。
「そういえば、五年生はNEETテストがありますね。去年の四学年成績上位者の自信はいかほどですか?」
四年生二回目だったので当たり前の結果だった。去年は去年。今年は本気で勉強しなければ前年度に比べ、かなり下回ることになるだろう。それに将来に関わるNEETテストもある。手を抜くわけにはいかない。
「正直、あんまり自信ないです。代わりに毎日勉強漬けですね…。クィディッチしかやることないので勉強するのはいいんですけど…」
けれどもたまには遊びたい。マグルの娯楽の筆頭、テレビ、ゲーム、漫画を見てゴロゴロしたい。しかし今日本に戻っても家はなく、漫画なども古くて知らないものばかり。とてもつまらない。ゲームなんてスーファミさえも発売されてないのだ。信じられない。久しぶりにゲームセンターで九つのボタン、または五個のボタンとターンテーブルを回したい。
「たまには息抜きしなければ、あなたの横にいる先輩のようになってしまいますよ?」
「おいコラ。あたしが猛勉強しないと追いつけないほど連れ回して勉強に遅れさせた奴の存在忘れてない?」
「おっかしぃですねぇー。連れ回した人物の成績は下がるどころか年々上がってますけど?」
「あたしが懲罰くらってる間に勉強してたから遅れなかったもんなー?」
「それもまたおかしな話です。懲罰をもらうほどのことをしていたのはもう三年前の話ですが?」
「一年の頃から連れ回されてましたからねー」
「間に夏休みがあるじゃないですか。夏休みに勉強すれば取り戻せたはずですが、そこは?」
カルナは言い返せなくなり、口を閉ざした。カルナを言い負かしたエドワードはニタァ、と嫌な笑みを浮かべ、勝利のミルクを飲み干した。カルナは苦々しい顔で見届け、ソーセージにフォークを突き刺した。
「勉強もほどほどに」
「そうですねー」
今年はどんな授業をやるのだろう。楽しみなようで憂鬱だ。レポート、書きたくない。
私はチキンにかじりつきつつ授業のことを考えて気分を落ち込ませた。
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