親世代五年生

□四話
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休日。スネイプになんと言われようとベゾアール石を返すため、ホグズミートへと出かけた。
その途中、たまたまスネイプを見かけた。一人ではなく、シリウスの弟、レギュラスも一緒だった。声がかけづらいのでコソコソと隠れながら二人のあとをついていくと、薬問屋へと入っていった。
これで偶然を装って中に入り、ベゾアール石を返せる、と思ったのだがレギュラスもいる。
私からプレゼントをもらったことを知られたくないはずなので頭を悩ませていたが、しばらくしていい案を思いついた。授業で助けてもらったお礼として返すと言えばレギュラスにもわからないだろう。私は財布を用意しながら中へ入った。
「いらっしゃいませ」
チリンチリンと鈴の鳴る音で二人が振り返りこちらを見た。視線が合ったが、スネイプはやはり無表情だった。
軽く会釈をしてカウンターにいる店主にベゾアール石を一つ下さい、と言った。話の意識外にいる人間には、私の言葉は母国語の日本語にしか聞こえない。スネイプは気づいていないはずだ。
店主に代金を渡し、ベゾアール石が入った小さな包みを持ってスネイプとレギュラスに近づいた。
「こんにちはー」
「こんにちは。お久しぶりです」
スネイプは棚を見たまま顔を合わせようともしない。回り込んで顔を覗き込むと、うっとおしいと言わんばかりに眉をひそめた。
私は握っていた包みをスネイプのローブへ滑り込ませた。スネイプはそれに気づいたが、私を睨むばかりで返す気配がなかった。
それを受け取ったとみなし、一言「ありがとうございました」と言って、出入り口へ体を向けた。
「あの」
レギュラスの声だった。足を止めて振り向くと、夏休みで見た輝く笑顔で言った。
「よろしければ、これから村の店を一緒に回りませんか?セブルスは城に戻るそうなので、僕と二人ですが、いかがでしょうか?」
スネイプいないのか。少し落胆しつつ、死喰い人候補だけど話すだけなら、と思い了承すると、レギュラスはイケメンビームを発射した。薄暗い店内の雰囲気の中でより輝いて見える。
「では、行きましょう」
「はい。…スネイプまたね」
スネイプの背中は何も答えない。慣れているので気にせず外に出た。レギュラスと少し間を開けたのだが、向こうから少し距離を詰められて内心ビクビクしながら歩いていると、丁寧な口調で話しかけられた。
「来週はレイブンクローとハッフルパフの対戦ですね。自信はいかほどですか?」
「うーん…そこそこですね。…キャプテンが言っていたのですが、ハッフルパフはレイブンクローに似てバランス型で長丁場になるだろうと」
「そうですね。ハッフルパフもレイブンクローに似て手堅い。お互いルールを重んじているからでしょう」
レギュラスは暗にルールなんて無視して箒から引きずり落とせと言っている。スリザリン気質な言葉を聞いて面食らっていると笑顔のまま言った。
「ルールを重んじることは悪いことではありませんが、退場がないクィディッチでは当たり前の戦法です。もし長期戦にもつれ込む可能性があるので一つの手として考えて下さい」
レギュラスはクィディッチ選手としては先輩だ。試合中、やられたらやり返すのはごく当たり前なのだろう。
危険思想だなぁ、と思いつつもアドバイスをしてくれたのでとりあえずお礼を言った。
「アドバイス、ありがとうございます」
「いえ、それほどでも。…僕としてはあなたに是非勝ち進んで頂きたいので。去年の雪辱を…これは失礼、雪辱とは物騒でしたね…とにかく、あなたともう一度戦いたい」
「そうですか」
夏休みに話したかったのは、やはり敵情視察のためだったようだ。後輩といえど侮れない。多少警戒しつつちらりとレギュラスを見ると、笑みを絶やさずに私を見つめていた。
近距離でイケメンに見つめられ、胸が高鳴らないわけがない。中学二年生にあるまじき色気を醸し出すレギュラスから視線をそらした。
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