親世代七年生〜その後

□六話
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決闘クラブの後、何事もなく平和な日々が過ぎ、やがてクリスマス休暇に入った。ほとんど代わり映えしないメンツで、ホグワーツのクリスマスパーティーをし、豪華な晩餐を食べて部屋へ戻ろうとした。
そこへスネイプが声をかけてきた。
「おい」
「んー?」
「これから一杯飲まないか?ルシウス卿からの成人祝いで、いいワインを頂いたんだ」
「ワインは苦手なんだ…」
ワインは通常の酒類と違った酸味があるので苦手なのだ。単体でなく適当にジュースで割るなら飲めるが、上質なワインをそのような飲み方をしては失礼に値するだろう。
「ごめんねぇ。普通のお酒かカクテルなら飲めるんだけど、ワインはどうにも…」
「ふっ、舌はまだ子供だな」
どっかで聞いたことあるセリフ。腹が立つ。
「好みがあるんだから仕方ないじゃん。美味しくないものは美味しくない」
「好みか。一理ある。僕も甘い物は苦手だが、大多数の者は好んで食べているしな」
「そんなもん」
私はそう言って、なぜスネイプがわざわざ話しかけてきたか理由を考えた。もしかすると休暇に入ってもなにも聞きに来ないので、スネイプ側から礼をしようと話しかけてきたのかもしれない。もしそうなら大変申し訳なく思い、どうせなら今から遊びに行こうと思いついた。
「ワインは飲まないけど、ちょっとお邪魔しようかな」
スネイプはこくりと頷き、スタスタと歩き出した。その背中を追ってスリザリン寮の中へ入り、スネイプの部屋へ足を踏み入れた。
スネイプはすでにワインとグラスを二つ、サイドテーブルの上に用意しており、コルクを抜いて内一つに注いだ。
「すまないが、ワイン以外は用意していない。何か飲みたければ自分で持ってこい」
「さっきたくさん飲んだから大丈夫」
スネイプは空のグラスを手渡してきた。それを受け取り、スネイプのグラスに当てた。チン、と合わさる音が響く。
「乾杯」
「乾杯」
スネイプは一口飲み、味を確かめて言った。
「ルシウス卿から成人祝いなど畏れ多いことだ。お前からしてみれば、マクゴナガル教授から貰うようなものだ」
「なんでマクゴナガル?」
「僕にとって絶対的なのは……」
「ああ、なるほど」
つまりスネイプにとってのダンブルドアは闇の帝王だということか。ホグワーツの教員の役割と立場を思い浮かべて納得した。
「そういえば、ルシウス卿が理事に就任したのは喜ばしいことだが、ダンスパーティーとはな。予想外過ぎて、夏休み中たまたま会った時本人に聞いてしまった」
「そう?華やかなイメージがあるけど」
庭に孔雀を飼っているのだ。あり得なくはないだろう。
スネイプは頷いたが反論した。
「少々派手なことが好きだが、学業に関する熱意は人一倍なんだ。あの方は僕以上に純血主義を遵守していて、純血はマグル出身者より学が高くなければならないとしきりに言っていた。だからそんなあの人が学業に関係ないイベントを主催すると聞いて驚いたんだ」
「確かダンブルドアが去年の終わり、一部生徒の間で流行ってて、ルシウス卿が知ったからって感じのこと言ってたよね?」
「ああ。だがしかし納得できなくてな。話を聞くと、レギュラスがどうしてもやりたいと申し出たらしい」
「へぇ…」
もしかしなくとも、私と踊りたかったのか。
スネイプは私の顔色が変わったので口元を歪めた。
「あいつの言う通りにすれば、お前も上流階級の豪勢な暮らしが送れるのに。今からでも遅くない。癒者の学校に通う資金もすぐに出してもらえるぞ?」
「…レギュラス、婚約するんだよね?」
婚約の先にあるのは結婚。私のことを諦め、新たな道に進んだはずではないのか。
スネイプは少し驚いている私を、小さく鼻で笑った。
「僕らには何も話さないが、お前のことをまだ好きだとわかる。じゃなければ、度々クィディッチの練習を見学しに行く理由がわからん。それに」
スネイプは、ひと呼吸入れてから続けた。
「あの婚約者であるマリーは、魔女の権利と地位の向上に対して、そこらの女子とは比べものにならないほど高い意識を持っている。ここを卒業した後はすぐには結婚せず、ボーバトンへ復学すると以前から言っていた。親には反対されたとも言っていたが、婚約という形である程度満足させ、復学しようという魂胆だろう」
「はえー…なんか、すごい子なんだね…」
「ああ。いろいろな意味でな」
きっと、しもべ妖精について語るハーマイオニーのように、語り出すとアツくなるタイプなのだろう。婚約相手のレギュラスは、魔法界の中でも上位に位置する玉の輿。親もそれで満足してくれているのだろうことは、想像に難くない。
スネイプは間を置いてから、話を元に戻した。
「それでどうだ?あいつの結婚は?」
「お金はそりゃあ欲しいけど、自分で稼ぐ。そんな財布みたいな扱いしたくないし、私なんも面白くないから、すぐ飽きられて捨てられるだろうし…」
「自分を卑下するか。…お前は自信家だと思っていたが違うのか?」
「なんでさ?」
「レイブンクローは自分の知識と理性を鼻にかけている自信家が多い。それにレギュラスを袖にするなど、お高くとまっているように見えてな」
知識とはいっても学校の本に書かれていることしか知らない。
スネイプのように闇の魔術に詳しいわけでも、ダンブルドアのように多数の種族の言語に通じているわけでもない。
「こんなんじゃお高くとれまないよ。首席くらいなら威張ってもいいと思うけどね」
「そうだな。…だが、恋愛に関することでは威張れるのではないか?」
「レギュラスに告白されたのは、まあ、誇っていいよね。うん…ホント…」
歯切れが悪い返答を返すと、別の人物をやり玉に上げた。
「他にもルーピンだな。物腰が柔らかいクセに堅物なのでおかしいとは思っていたが、五年生の時、それには理由があることを知った。…お前はルーピンの持病が実際はどんなものか知っているか?」
「うん」
「やはりな。そのせいであいつは誰とも付き合わないのだと分かって、少し哀れに思った。あれほど周囲に好かれているのに……だがお前と付き合うとはな」
「付き合ってない付き合ってない」
「今更隠さなくてもいい。レギュラスほど申し分ない相手を断るということは、そういうことなんだろう?人狼と付き合うこ」
スネイプの言葉を遮って笑い飛ばした。
「ホンットーに付き合ってないってば。告白してもないしされてもない。真実薬飲んだっていいぐらい、本当のことだかんね」
「そうなのか?これは驚きだ」
スネイプは眉を上げ、ワインを一口飲んだ。
驚きもなにも、手を繋いでラブラブしてもないというのに付き合っているなどあり得ない。
「リーマスとは仲良いだけ。そんだけ。それ以上なにもない」
「ふむ…。噂になるのが嫌で隠しているのだと思っていたが、そこまで否定するなら本当らしいな。ならレギュラスに伝えておこう。これを聞いたら泣いて喜ぶ」
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