死の秘宝

□五話
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懐中時計の針を見つめ続けて早三○分。
「先生ー。三○分でーす」
スネイプの肩を揺らし、覚醒させた。
「………」
たったの三○分だというのに、深い眠りについていたらしく焦点が合わないスネイプの顔を見つめた。
やはりとても疲れているようだ。こうなるなら、以前プレゼントした栄養ドリンクを買っておけばよかった。
「学校に戻りましょう」
「ああ…」
スネイプは同意し、ベッドから気怠げに抜け出ると話し始めた。
「しかし、このまま戻ったのでは要らぬ混乱を招く。それにどう弁明しようとダンブルドアを殺害したのは覆すことのできない事実であるからして、大多数は我輩を隔離しようとするだろう…」
「…いつの間にそんなこと考えてたんですか?」
ナギニに咬まれてから寝るまでの間に、そんな暇はなかったはずなのに。
疑問符を浮かべながら椅子から立ち上がってスネイプを見上げると、寝起きで不機嫌な顔をしているスネイプは視線を合わさずに言った。
「マクゴナガルから逃走した時からだ。どうやってポッターにナギニを倒す術を与えようか考えていたためだが…」
しかし帝王はスネイプを見逃さず、ニワトコの杖を完全に服従させるためにスネイプを殺そうとした。そしてスネイプはグリフィンドールの剣のことを知らせるために記憶を渡した。
「思惑通りには事は運ばなかった。しかし、無駄ではなかったがな」
スネイプはやっと私を見た。その目はどことなくダンブルドアの眼差しに似ていた。
なぜダンブルドアに似ていると思ったのか自分でもよくわからなかったが、数秒たってそれが親しみを込めているのだと気づいた。
私が仲間だと完全な認めてくれたのだろう。
「パナケアが効いてよかったです」
「礼を言う。ありがとう」
不意に発せられた、紛れもなく本人からの感謝の言葉。
何をしようと、何をプレゼントしようと聞くことがなかった言葉が、たまらなく嬉しかった。
「こちらこそ。先生…あー今は校長ですね。校長にいろいろ教わって人生の勉強になりました」
大半が説教と小言と罵倒だったが、それが彼なりの教えだったのだろう。今では幾つもの言葉が私の支えになっている。中でも去年の大広間前での一言、死ぬな。
だから幾つもの死線を乗り越えることができ、ホグワーツを離れても生きてこれた。心の底からそう思う。
「マグルの私がここまでこれたのは校長と、前校長のおかげです。私はこれからももっと、校長にたくさんいろんなこと教えて欲しいです」
「…ふ。それが叶うかどうか、わからんがな」
スネイプは初めて自嘲した。なぜなのか考えていると、スネイプの魔法界での立場を思い出した。
「死喰い人だからですね…それも帝王の側近だから」
「そうだ。ダンブルドア殺害については弁明できるが、我輩が加担した過去の事件や、ここ数年の事件に関しては全て帝王の命令の元、行った。ポッターを生かすためにした事だとしても、それがどう左右するのかは想像がつく」
命をかけてまで、してきた事なのに。全てを知れば、きっとわかってくれるはず。
しかしスネイプが全てを話すだろうか?今まで死喰い人に甘んじてきたのは一人の女性のためだと。それを世間に知られないように、アズカバンを選ぶかもしれない。
「………」
「全ては審議会が決めることだ」
スネイプは自分の頭に杖を向けると目と口を閉ざした。すると、みるみるうちに容姿に変化が現れ、やがて見覚えのある姿に変貌した。
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