和風パラレル本棚

□第弐章 日常
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「また迷子になった…サンジの屋敷は広いな」

ルフィは途方に暮れたように呟く。
散歩気分で屋敷の中をウロウロしていたら、いつものごとく迷子になってしまったのだ。
この屋敷は広いのだが、使用人や家来というものはほとんど存在しなかった。どうやら、昔は大勢いたらしいのだがサンジが家主になってからは違う仕事を見つけてやり、辞めさせてしまったようだ。
だから、現在地を訊ねようにも誰もいない。

「困ったな〜。あ! パウリー!」
「お、犬神。何してんだ? こんな場所で」

運良く発見した大工のパウリーにルフィは笑顔で駆け寄った。

「迷子だ迷子! サンジの書斎ってどこ?」
「……ここから真逆だ」
「そうなのか?」

ルフィがじっとパウリーを見つめると、顔を赤くして視線を逸らす。

「つ、連れて行ってやるからついて来い」
「ホントか? ありがと」
「べ、別に構わねェ」

にかっと笑ってルフィはパウリーを見上げた。そして、先に歩き出したパウリーの横を歩く。

「お前はこんな場所で何してたんだ?」
「お前が壊したタンスの修理」
「……あ〜、そうだったっけ」

確か、近所の飼い犬とじゃれて遊んでいたら、勢いでタンスを破壊してしまった気がする。
サンジが怒っていたのを思い出し、ルフィは身をすくめた。

「……今日は人間の格好なのか?」
「え? ああ、耳と尻尾か。うん、練習中なんだ〜。油断すると、すぐに元に戻っちゃうから。サンジにも屋敷の中は別に気にしなくていいって言われたんだけどな」
「そう…か」

幾分ガッカリしたように呟かれ、ルフィは首を傾げる。

「ん? 見たいのか?」
「そ、そういうわけじゃねェ…」
「消すの、そんな妖力使うわけじゃないけど、ずっとは疲れるからな」

ルフィはそう言うと、耳と尻尾を出した。やはり、こちらの方が楽だ。


ルフィがパウリーに初めて会ったのは二日前。
屋敷の改装のついでにサービスで庭木の手入れもしてやろうとパウリーが無断で縁側に向かったところに、耳と尻尾を出したまま昼寝をしているところを見つかったのだ。
パウリーは偶然通り掛かったサンジにド突かれるまでルフィをじっと眺めていたらしい。
そのあと、見られたからにはしょうがないということで安眠していたルフィは起こされて、寝ぼけながらパウリーに自己紹介をした。
だから、パウリーはルフィが犬神であることを知っている。今さら耳や尻尾を隠す必要もない。


じっと見つめてくるパウリーを気にせず、ルフィは角を曲がった先にサンジを見つけて手を振った。
サンジは呆れながら、手を振り返してくる。

「また迷子になってたのか」
「だって、この屋敷広いんだもん」
「ここに来て五日目だろ? そろそろ慣れろよ。はァ、パウリーそこら辺にこいつ縛っといてくれ」
「て、てめェなんてハレンチなことを言うんだ!」
「アホか! てめェの頭の中の方がハレンチだろうが!」

どんな縛り方を想像したのかサンジの言葉に過剰反応したパウリーの顔は赤い。
ルフィは首を傾げて二人のやり取りを見た。
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